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STePP アフリカ産業職業訓練プログラム:ウガンダの研修生、日本の自動車リサイクル技術を学ぶ/石川県の会宝産業が1ヶ月の研修を実施

STePP アフリカ産業職業訓練プログラム:ウガンダの研修生、日本の自動車リサイクル技術を学ぶ/石川県の会宝産業が1ヶ月の研修を実施

UNIDO東京事務所の「STePPアフリカ産業職業訓練プログラム」の研修生2人が202311月にウガンダから来日し、日本の自動車リサイクル技術を学ぶ約1か月の研修を無事に終えました。研修生2人は石川県金沢市の会宝産業株式会社の指導のもと、工場や研修施設で自動車リサイクルの知識や解体の技術を学びました。ウガンダでは使用済みの自動車に対する適切なリサイクル技術が普及していないことから、環境問題や健康被害などが社会問題となっており、2人は今後、日本で学んだ技術やノウハウを母国で普及させる研修を実施します。

研修生2人はウガンダの「ナカワ職業訓練校」で自動車の整備や修理などを担当している指導員です。

研修生のセバナキタ・ウィルソン・カーヤ氏とアレトール・ゼルバベル氏(左から)

再利用できる部品はどれか?廃車の正しい解体方法を学ぶ

What’s next(次はなにをする)?」「Which one is pure iron(どれが純粋な鉄)?」。11月下旬、会宝産業の解体工場では、同社の日本人スタッフと研修生が横倒しになった廃車タクシーと「にらめっこ」していました。研修生2人は手順や使う工具を迷いながらも、リサイクルできる部品や素材が同じ部品、廃棄物などに丁寧に仕分けていました。これは、研修で学んだ知識をもとに、研修生たちが実際に廃車を解体する「自主解体」研修の一幕です。

本研修では、安全で環境に配慮した使用済み自動車のリサイクル技術とノウハウをもつ会宝産業(石川県金沢市)が研修を担当・実施しました。研修生2人は同社の宿泊兼研修施設で約1か月にわたって寝泊まりしながら、廃車の解体・分別方法、解体時の安全面に関するガイドラインや法規制、ウガンダでの適応方法の検討などについて議論しながら学び、同社の解体工場では、仕組みのタイプが異なる廃車計5台を解体する実技研修を受けました。

指導を受けながら部品の取り外しと仕分けに取り組む様子

安全に部品を取り外せるよう手順を確認しながら作業する研修生たち

 

 

 

 

 

 

 

 

また、こうした実践的な研修に取り組みながら、研修生2人は会宝産業のサポートのもと、その日に得た知識と実践を書き起こし、解体の手順を記した合計177ページのマニュアル「Recycling of End-of-Life Vehicles – A Guide for Environmental Protection, Safety and Profit(使用済み自動車のリサイクル〜環境保護、安全性、ビジネスのためのガイド)」を完成させました。これは2024年にウガンダで実施する本プロジェクト第2フェーズで活用されます。

「日本とウガンダの架け橋に」/自動車リサイクル技術をウガンダで普及へ

日本での研修を通じて、2人はどんな知見や技術を得ることができたのでしょうか。研修を終えたばかりの2人に、研修への思いや第2フェーズに対する意気込みを聞きました。

アレトール氏は「これまでは何の知識もないまま車から部品を取り外していましたが、この研修で環境や安全面を考慮した正しい解体方法を学ぶことができた」と手ごたえを感じており、「私がこれまで全く知らなかった『廃車をどのように扱うべきか』に関する知識や技術、設備を見聞きすることができ、すばらしい経験になった」と振り返りました。

セバナキタ氏も「自動車部品を扱う工具や設備の正しい使い方を学ぶことができた。まずは自分が勤める職業訓練校の生徒への指導に活かしながら、ウガンダで広めていけばインフォーマルセクターの自動車に関連するスキルレベルを高め、国の雇用創出にも貢献できる。また、このプロジェクトで環境面でもウガンダが抱える多くの問題を解決できる」と述べました。

研修生たちによると、ウガンダでは自動車を廃棄する場所がなく、自動車のオイルやフロンガスが適切に処理されず、水や土壌、大気などの汚染につながっているといいます。研修生2人は、こうした母国の現状を変えたいという思いで研修に参加したと語りました。本プロジェクトの第2フェーズが始まる2024年には、今度は研修生2人が指導者となって、自身が勤務する職業訓練校の生徒たちに向けて、日本で得た自動車リサイクルの技術を伝えます。

第2フェーズに向けて、アレトール氏は「会宝産業のリサイクル技術は環境や安全、そして自動車部品をリサイクルする新しいビジネスにもつながる。この経験や知識を職業訓練校の同僚や生徒たちに伝え、自分が架け橋となってアフリカに普及させたい」と意気込みました。

「分別処理」の技術移転を通して日本の「後始末」の心を伝えたい

指導側として研修を担当した会宝産業海外事業部の橋本悟助氏は、「研修生2人とも最初から非常に熱心に研修に取り組み、技術面でも自分たちが母国の環境保全のために学ぼうとする姿勢を見せてくれた。この思いというのは今後に生きると思う」と評価しました。一方で、日本とウガンダではさび具合やボルトなど細かい点で使用済みの自動車の状態が異なることから、第2フェーズでは研修生2人が中心になって現地に合わせた研修をつくる必要があると述べました。また、橋本氏は今回の技術移転プロジェクトへの思いとして、「いまは日本からアフリカにものすごい数の中古車が流れているが、適切に分別処理されていないのが現状で問題となっている日本企業としても売るだけでなく、日本の「後始末」という精神に基づいて、分別処理をするという技術も伝えていくことが求められている」と強調しました。

会宝産業の橋本悟助氏、山口敦史氏、アレトール氏、セバナキタ氏

 

閉講式が開かれた研修最終日の121日、会宝産業の近藤高行社長やUNIDO東京事務の足立文緒所長のほか、オンラインで在日ウガンダ大使館の関係者たちが参加しました。研修生2人は1か月で学んだ内容を発表し、第2フェーズに向けた思いや意気込みを述べました。最後に足立所長より2人に研修の終了証が授与され、日本での研修が締めくくられました。