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G20-T20ラウンドテーブル 「グローバル・バリューチェーンと包摂的な発展 ~ FDI、投資促進、連携創出」

G20-T20ラウンドテーブル 「グローバル・バリューチェーンと包摂的な発展 ~ FDI、投資促進、連携創出」

2019.05.28

海外からの投資の受け入れは、企業がグローバルバリューチェーン(GVCs)に参入するきっかけとなり得ます。また、国内の企業や産業に明らかに利益となる、技術や資金をもたらします。しかし、海外からの投資をめぐる競争が激しさを増す中、FDI(海外直接投資)誘致には課題がないわけではありません。これは、T20サミットを機に528日に東京で開催された、国連工業開発機関(UNIDO)とドイツ開発研究所の共催による「G20-T20ラウンドテーブル」の重要な洞察です。会議では、投資円滑化や投資促進の役割と、企業間連係創出という2つの主要なトピックが取り上げられました。これらは、政策立案者にアイディアや選択肢を提供するものであり、G20以上のレベルでの証拠に基づく政策立案に寄与することでしょう。 

冒頭、UNIDO東京事務所の安永裕幸所長は、「2030アジェンダの実行とSDGsの達成のためには、国際的な投資の結集が重要であります。投資は、特に各国経済の生産能力を増大させ、必要な雇用を生み出すことによって、途上国の貧困削減戦略において中心的な役割を果たします」と挨拶。

続いて、エチオピアから来日中のFetlework Gebregziabher Abrha 貿易産業大臣が基調講演し、「持続可能な開発のために重要なのは、FDIで単に資金を集めることではなく、投資の質を引き上げることです」とスピーチしました。さらに、大臣は、GVCsに参入するための技術的要求はかつてないほど厳しくなっており、その結果、排除のリスクが現実的となっている、と強調。「たとえGVCsに参入できたとしても、開発途上国がバリューチェーンの中で付加価値の低い活動に閉じ込められたままになるという明白なリスクがあります」とも付け加えました。

最初の専門家パネルディスカッションでは、投資円滑化における最も効率の良い方法を議論し、現在WTOで議論中の投資円滑化に関する国際的な枠組みの潜在的利点について詳細に検討しました。WTO加盟国は現在、各国内での取組みに加え、FDIへの障害に対処すべき多国間の投資円滑化の枠組みについて議論しています。

FDIの障害は、政府規制の予測可能性、透明性、そして効率性によることが多いのです」とは、ドイツ開発研究所のAxel Berger上級研究者。専門家らは、投資円滑化についての議論をサポートするためには、持続可能な開発を支える多国間投資円滑化の枠組みの範囲と、潜在的な影響に関し、更なる研究が必要であると結論付けました。

第2の専門家パネルディスカッションは、国内企業、とりわけ中小企業(SME)を多国籍企業のグローバルな生産ネットワークに参画させることに焦点を当てました。中小企業を参画させる是非について、長期的な成長の観点から見た合理性と、長期的に有益な方法で国内企業と海外投資家を結びつけるために必要な政策について検討。

「グローバルバリューチェーンへの東南アジアの中小企業の参画:海外投資家との連携を可能にする」と題したUNIDO-OECD合同報告書が、Adnan Seric氏(UNIDOの工業リサーチ・政策オフィサー)によって紹介されました。同氏は、途上国における中小企業の発展と成長を支えるための、調査に基づく戦略についての洞察を示しました。報告書の調査結果に基づいて、ASEAN地域およびその他の地域で成功した政策例について見て行きました。

パネリストたちは、FDIが投資全体の拡大や生産性の向上といった波及効果を生み出す可能性があることに同意。「戦略的投資促進、国内企業の能力開発および的を絞ったビジネスマッチングは、受入国側が多国籍企業から恩恵を受けるための重要な要素です」と述べたのは、国際協力機構(JICA)研究所のチーフエコノミストである大野泉教授。また、大野教授は「地元企業がなぜGVCsのサプライヤーになることができないのか、そして技術面と能力面でボトルネックがどこにあるのかを政府が理解することは不可欠です」とも指摘しました。

GVCs及びSMEの参加に対するデジタル経済と第4次産業革命の可能性についても議論されました。韓国開発研究所(Korea Development Institute)のDongsoo Kang事務局長は、「第4次産業革命は、GVCsの運営方法を根本的に変化させる可能性があります。労働力のコスト優位性は、もはや開発途上国にとっての競争力では無くなるかもしれず、それが外国投資を誘致する課題にもなり得ます」と述べました。また、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)の木村福成・チーフエコノミストは、「ロボット技術の導入とその組織での雇用拡大との間には正の相関関係がある」とするERIAの最新の調査を参考に、より楽観的な見方を示しました。

 T20関連イベントは、T20タクスフォースでの議論への更なる貢献が期待され、大阪で来月開催されるG20サミットに向けた政策協議への貴重なインプット情報になると期待されます。

For more information:

Adnan Seric
Research and Industrial Development Officer
UNIDO Research and Industrial Policy Advice Division

※発表資料は、氏名をクリックするとダウンロードできます。