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第66回

第66回

 先日、「はやぶさ2」のカプセルが豪州南部の砂漠地帯で無事、「完全な状態」で回収されたという報道がなされました。私は1962年生まれで、小学2年生でアポロ11号の月着陸をテレビで見て興奮した世代ですから、宇宙の話題は大好きです。ただ、今日は、宇宙そのものではなく、中小企業の話です。

 よく、特に日本の人工衛星や惑星探査機の成功が話題になると、結構な頻度でその基幹部品を製造した中小企業の技術がクローズアップされます。「こんなものを作ってくれるのはこの町工場しかない」といったような表現で宇宙開発関係者(JAXAの人など)が謝意を示すことも珍しくはありません。私達もその報道に触れると、その有難さに「日本の中小企業は素晴らしい」という強い印象を持ちます。また、私の事務所では、来日した開発途上国政府の投資誘致担当官を大田区等の中小企業の現場にご案内する機会もあります。従業員数人の工場で、航空機専用のネジを作る会社や、高付加価値の自動車部品・産業機械部品を作るプラスチック成型加工会社を訪問させていただいたこともあります。一様に彼らは驚嘆し、こういう産業構造・エコシステムを有する日本を羨ましいと口々に繰り返します。彼らの真剣な表情からは、決して社交辞令とも思えません。

 私達が運営しているオンライン・データベースである「サステナブル技術普及プラットフォーム(STePP)」は、環境・エネルギー・アグリビジネス・保健衛生という分野を対象としていますので、いわゆる部品製造・部材加工の企業は少ないのですが、様々な独自技術を持ち、ユニークな製品やシステムを提供する中小企業が数多く含まれています。

 今年はコロナ禍で、中小企業の多くが非常に厳しい経営環境に置かれておられるものと認識しています。また、大企業も中小企業も、海外に向けての営業活動は大きな制約下にあるものと思います。しかしながら、そういう状況下であっても(あるいは、そういう状況下であるからこそ)世界の課題解決には、日本企業の技術がこの瞬間にも求められている筈だという確信から、128日には『SDGs & サステナブル技術セミナー』と、それに引き続いて9日・10日には『サステナブル技術展示会』をどちらもオンラインで開催しています。STePP登録技術をお持ちの企業から23社に参加いただきました。また、初日のセミナーには37ヵ国から174名の方々が聴衆として参加されました。私もブースを見て回りましたが、実際の機器を見ることができないかわりに、訪問者の足跡が残る仕組み等、確かにこれは便利な要素があります。

 『中小企業白書2020』の付属統計資料によれば、日本には2016年時点で、個人事業者を含めて360万社近くの中小企業があり、その1割強に当たる約38万社が製造業に従事しています。UNIDOは、製造業だけを仕事のパートナーとしている訳ではありませんが、それでも開発途上国・新興国の経済発展に関して、先方から最も求められているものが「製造業に従事する中小企業の育成」であることも事実です。勿論、日本とは経済・社会の基礎的条件が違いますから、日本流が全て通用する訳ではないでしょう。時代もどんどん変化しています。自分達の限界を感じることもままありますが、技術を持った中小企業の投資促進には、来年も更に力を入れたいと考えています。