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第65回

第65回

 早いものでもう12月です。今回の話題はエネルギーです。我が国でも「2050年カーボンニュートラル実現」に向けた議論がいよいよ本格化していますが、私達の組織としては、開発途上国のエネルギー問題を何とかしないといけません。

 エネルギーの供給については、その国の置かれた自然環境をよく考慮する必要があります。大きな河川の無いところでは大規模水力発電は無理で、火山の無いところでは地熱発電は無理で、風向・風速の安定した風の無いところでは風力発電は無理で、晴天の少ない、あるいは高緯度地方では太陽光発電・太陽熱利用が無理なのは当然の話です。

 また、開発途上国ではエネルギー需要が急伸する一方で「エネルギー(電力)にアクセスできない」人たちが多く、文化的な生活を営めていません。こういう国々ではより安価なエネルギーが必要とされています。再生可能エネルギーは一般的に高コストですので、先進国と同列の議論はできません。 

 アフリカ開発銀行の High 5s という目標の中でも、電力供給については最重要課題と認識されており、“Power Africa” というスローガンの下、大規模発電所や送配電インフラの構築が進められています。日本としても、この分野で大きな貢献を行うことが期待されており、JICAの無償資金援助や円借款の相当部分がこうしたインフラに投入されています。アフリカには未利用の大規模河川(勿論、電力に加えて治水や生活用水・農業用水の確保の観点からも重要です)も多くありますし、ケニア等のアフリカ東部での地熱発電のポテンシャルは良く知られています。加えて、サハラ砂漠やナミブ砂漠は日射量や晴天率といった指標からも世界有数の太陽光発電及び太陽熱利用のポテンシャルを有しています(勿論、砂塵によるパネルの劣化、埃の付着による発電効率の低下、といった課題も沢山ありますが)。加えて、南部・北部の西岸では偏西風が安定して吹きますので、風力発電も有望です。アフリカでも、こうした分野への外資導入政策やFITによる政策的支援が開始されています。

 また、アフリカは大陸全体で13億人近くの人口を擁していますが、その殆どが都市部に集中していますので、農村部には分散型電力インフラが有効と言えるでしょう。また、当然、地域レベルでの需給バランスを考えれば、国境をまたぐ送配電インフラも必要です。

 まあ、こんなことは専門家には常識で、どんどんそういう方向でのエネルギー開発が進んでいるのだろうと思いますが、それでもまだアフリカには「未電化」の地域に住んでおられる方々が6億人以上居ると言われています。ただ、逆に言えば、アフリカの大部分では、先進国が経験した化石燃料エネルギー文明が浸透・普及していない訳です。特にエネルギー、交通、通信といった巨大投資の必要な分野では、それまでの投下資本を回収しないことには次の技術に転換ができず、結果として最新技術の導入が遅れてしまうことがあります。アフリカで固定電話網が発達していないがために携帯電話が普及し、銀行の支店やATMが無いためにモバイル課金が普及しているのはその良い事例です。いずれにせよこの分野では、そうしたleapfrog論とともに、地域全体をカバーした総合的なエネルギー戦略が重要ですね。