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第64回

第64回

 今週は「アフリカの諺」についてお話ししたいと思います。

 アフリカには諺が数多くあります。先日、セネガルと日本の国交樹立60周年機関のイベントに参加した際、シス駐日大使が紹介されていたのが、おそらく最も有名な諺で『早く行きたければ一人で行きなさい。遠くまで行きたければ仲間と一緒に行きなさい』というものでした。この諺は色々なところで紹介されていますので、ご存じの方も多いと思います。

 仕事をする上でも、何かのチャレンジをする上でも、心に響く諺です。遠くまで行きたければ、というのがミソですが、いずれにせよ一人の人間のキャパシティというのは知れています。おそらく「仲間」という言葉の中には、「色々な能力・得意技を持つ、多彩な仲間」という意味も込められているのだと思います。国際機関で働いていると、これを実感する機会が実に頻繁にあります。

 『乗っている人がそれぞれ勝手な方向に漕ぐならば、舟はどこへも進むことができない』という諺もあります。これは、日本で言う「船頭多くして、船、山に登る」ですね。あ、日本だと「どこへも進まない」どころか「変な方向に行ってしまう」という意味になるか。やはりどこでも同じ戒めがあるのだなあ、と気づきます。まあ、残念ながら、これも現実社会では結構あることだ、という経験をお持ちの方も多いように思います。

  『ライオンに率いられた羊の軍勢は、羊に率いられたライオンの軍勢に勝つ』という諺もあるそうです。これはガーナの諺だそうですが、ここからリーダーシップの重要性を読み取ることもできますし、実際の「戦闘力」とはどんなものか、を暗示するものと考えることもできますね。皆さんよくご存じの通り、織田信長の軍事面での大きな功績(というか、制度上のイノベーション)の一つが、それまでは領地の農民をもっぱら農閑期に徴発して戦争を行っていたのを、戦闘専門の職業軍人という集団を作って「いつでも戦闘ができる」軍勢を作ったことだと言われています。信長は「強い軍隊」よりも「いつでも動かせる軍隊」を重視した、ということですね。この点については、世界の歴史をもう少し勉強してみたいと思います。 

 もう一つ、考えさせられたのが『英知とはバオバブの木のようなもの。誰も一人でそれを抱きしめきれない』というものです。今回引用させていただいた諺は、一般社団法人アフリカ協会の季刊誌の裏表紙に掲載されていたものですが、これについてはどの国の諺かは書いてありません。まあ、バオバブの木が出てくるのでアフリカ南部でしょう。実に深いな、と感じさせる諺ですが、多分「一人で所有するには膨大過ぎて不可能だ」という意味と、「一人で独占してはならない。皆で共有しなければならない」という二つの意味があるのではないかと想像します。

 諺というものが人々の行動の一種の規範となっているということは、その社会が成熟している証拠だと思います。また、諺は、過去の歴史の蓄積から生み出されたものでしょうから、諺が多い土地は、それだけ先祖からもたらされた智慧を大事にしている社会だと言えると思います。日本はどうか? 自分も含め、諺というものをあまり使わなくなってきているような気がします。この駄文も、たまには自分を顧みるのに多少の効能があるのではないかと思う次第です。