第53回
職場は無音というのがこれまでの常識でした。そうでなくとも日頃は電話やら来客やら会議やらで慌ただしい。ところが、テレワークが常態となり、オフィスに来ても人口密度が低く、来客も無いとなると静かな音量でBGMをかけるのも悪くない、と気づきました。と言っても、同僚に迷惑にならない範囲に限りますが。
職場でのBGMたるもの、まず、何といっても仕事の邪魔になってはいけないので、それほど大音量にはできません。また、音量のダイナミックレンジもあまり大きくない方が宜しい。となると、大編成の管弦楽とかプログレやヘビメタとかは不向きで、小編成の音楽ということになります。更に、やはり仕事への集中を妨げないためには、歌詞は無い方が適切。私の好きな昭和歌謡はさすがにあまりこういう用途には向いていません。当然ながら、やたらスチャラカで慌ただしい音楽や、シリアス過ぎる音楽もちょっと・・・。
個人的な偏愛も、時には仕事の邪魔です。私は高校時代からJazzを聴きはじめて早40数年。日頃、Roland Kirk というマルチリード奏者(サックスを3本咥えて和音を吹いたりする)の “Volunteered Slavery” の旧B面とか、Eric Dolphy というこれまたアルトサックス、フルート、バスクラリネットを操る奏者の “Last Date”、あるいは 極めてアクの強いCharles Mingus というベーシストの “The Black Saint and the Sinner Lady” といった超濃厚ギトギト音楽をこよなく愛聴していますが、これらも絶対に仕事のBGMには不向きです。また、あまりに耽美的な音楽も、そもそも昼間に聴くと仕事ができなくなりますから、向いていません。ちょい薄味くらいが良いのですね。
結論として、私の数ヶ月の試行の結果、「仕事の邪魔にならず、かつ、気分を落ち着かせてくれる」BGMは、次のようなものでした。バッハ オーボエ協奏曲(数曲あります。また、オーボエとヴァイオリンを独奏楽器とした曲もあります。どれもバッハの中では有名でないと思いますが良い曲です。)
- ハイドン 弦楽四重奏曲(沢山ありますが、特に作品76の6曲が素晴らしい。)
- ドビュッシー フルート、ハープ、ヴィオラのためのソナタ(編成がオシャレ!)
- プーランク フルート・ソナタ(これ、色々なところで実は鳴っている筈です。)
- MJQ (Modern Jazz Quartet) の “Fontessa”(有名な “Django” も勿論いい。)
- Red Garland Trio の “Red Garland’s Piano” (適度なお気楽感が仕事を捗らせる。)
- Earl Klugh の “Naked Guitar” (ソロ・ギターが部屋をなぜか涼しい気にしてくれる。)
- Stan Getz の “Bossas and Ballads: The Lost Sessions” (これはキモチいい!)
あ、ただ、これらはあくまでも私の個人的嗜好ですので、「うるさいぞ!」とか「全然落ち着かんぞ!」と言われる方がおられても、保証はできかねます・・・。