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第52回

第52回

 先週、当事務所とスリランカ投資員会(BOI)、駐日スリランカ大使館主催で、「スリランカ投資セミナー」をオンラインで開催しました。その中で、「現地で活躍しておられる日本企業」の代表のお一人として、中川装身具工業㈱の中川繁樹代表取締役会長に現地での工場運営の体験談をお話し頂いたのですが、それがとても面白く、かつ、勉強になったのでご紹介してみようと思います。

 同社は会社設立から今年で71年、戦前からカトリックのロザリオに使うチェーンを製造されていたとのことです。1970年代の末に商工団体の一員としてスリランカを訪れ、それがきっかけとなって1980年に現地工場を設立し、生産を開始されたとのことです。当初は女性用のネックレスに使われる真鍮製のチェーンと「引き輪」と呼ばれる留め具の生産に特化しておられたそうですが、同国の働き手の「手先の器用さ」を活かして、その後、ハンドメイドのチェーンで数々のヒット商品を生み出されたとのことです。

  1980年当時の同国の一人当たりGDP323米ドル、現在は4100米ドルを超えていますので、経済は目覚ましく発展し、現在は「低廉な工賃だけが取り柄の工場」ではなく、優秀な技術系の新卒採用を開始するとともに、日本の工場にもまだ導入されていない最新鋭の設備を導入して更に高度な製品を製造するようになってきているとのことです。 

 セミナーの中で、中川会長に「投資先としてのスリランカの魅力」について質問が寄せられましたところ、大変印象的なコメントが返ってきました。「投資許可や運用に関するルールが分かりやすく、かつBOIがワンストップ機関として仕事するのでやりやすい」「運営資金や配当の送金・受け取りがスムーズにできる」「治安は良く、教育水準が高く、手作業は日本人より丁寧で速い。それでいて人件費は周辺アジア諸国よりまだ安い」「人口は2000万人程度と大きくないが、インド・パキスタン・バングラデシュとのFTAがあるので、輸出拠点としてのポテンシャルは大きい」、というようなことでした。

 また、国民性としては穏やかな仏教徒が多く、蚊がとまっていても叩いて殺したりすることが憚られる(!)とのこと、現地における日本人との友好関係が目に浮かびます。新型コロナの影響はここにもあり、本年前半の業績は大変だったようですし、外貨流出を回避する目的で同国では乗用車等の輸入が制限されています。また、日本貿易保険(NEXI)のカントリーリスクマップを見ると、8段階の下から2番目の「G」ランク(ミャンマー、カンボジア、ケニア等と同等)となっています。そうした環境の下で、現地工場で430名もの従業員の雇用を維持し、社業を発展させてこられているのには頭が下がる思いです。

  さて、私達の職場では、日本から開発途上国・新興国への投資促進・技術移転促進の仕事をしている訳ですが、やはり基本はいつの時代も、どの国でも同じです。すなわち、外資系企業たる日本企業が、その土地で「愛され、頼りにされ」ることです。また、そのためには、当然ながら投資環境の整備、産業・生活インフラの整備は勿論、外資系企業が現地企業や現地の従業員の良きパートナーとして活動できることが前提条件となります。そういう「基本中の基本」を改めて痛感したセミナーでした。当たり前のことなんだけど、結構難しいんですよね~。