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第45回

第45回

 今年も折り返し点を過ぎ、残りが半年を切りました。皆さんも再び忙しく過ごしておられるものと思います。とは言え、東京都でのコロナ感染者の増加、そして様々な業種におけるコロナ禍起源での経営状況の急激な悪化、更には大雨による水害の頻発、と懸念は絶えませんね。

 7月9日(木)に、経済協力インフラ戦略会議というものが総理官邸で開催されたようです。ホームページから『インフラシステム輸出戦略(令和2年度改訂版)』(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keikyou/dai47/siryou3.pdf)をダウンロードしてざっと読んでみました。「低炭素・脱炭素技術の海外展開」の中で、「低炭素型インフラ輸出」が言及されており、その中に、報道でも取り上げられた、石炭火力発電に関する扱いが書いてあります。一部を抜粋してみましょう。

 「パリ協定を踏まえ、世界の脱炭素化をリードしていくため、相手国のニーズに応じ、再生可能エネルギーや水素等も含め、CO2排出削減に資するあらゆる選択肢を相手国に提案し、「低炭素型インフラ輸出」を積極的に推進。その中で、エネルギー安全保障及び経済性の観点から石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り、・・・・原則、世界最新鋭である超々臨海圧(USC)以上の発電設備について導入を支援」とあります。

 脱炭素化はここ数年、世界のエネルギーインフラ投資、そして途上国投資の趨勢です。そういう意味で、この決定は時流に適うものと考えます。が、日頃、途上国の方々と接している私達には若干の疑問も生じます。いつも彼らが私達に訴えるのは、「日本のインフラ(あるいは製品)は、信頼性が高く、長期間使える。省エネ性能も高く、凄く欲しいのだが、残念なことに、大変高価なのだ。私達の国にとっては『高嶺の花』とも言える」ということです。

 環境保全(特にCO2排出抑制)の観点からは、旧来型の低効率な石炭火力発電プラントを途上国に輸出する訳にはいかないのは当然です。が、上記のように最新技術を用いた非常に高効率なものだけを導入支援の対象とする、となると、限られたODA予算(円借款を含めても)では地球環境問題の解決に有効な規模の発電インフラの輸出は極めて難しいのも容易に想像ができます。しかも、途上国・新興国の電力需要それ自体は、今後も相当のスピードで増大していくのは確実ですから、逆に非効率で安価な石炭火力がどんどん導入されないとも限らない。これは大変なことです。

 勿論、援助は途上国投資のごく一部に過ぎませんから、純粋な民間ビジネスとして再生可能エネルギーや超高効率の石炭火力発電設備が海外に輸出されることもあります。が、上記のように高価」だとすると、それらが期待通りに普及する保証もありません。そうなると、やはり新しいイノベーティブな解を探す、という方向に進むことになります。世の中の現象は、全て「理論的限界>>装置的限界>>運用的限界」というようになっています。例えば、単結晶シリコン太陽電池の理論効率は28%前後ですが、実際に太陽電池セルやモジュールを作ると、様々な制約により、24~25%がせいぜいでしょう。そして実際に設置して運用するとなると、気象条件や劣化状況にもよりますが21~22%も出れば万々歳、となります。そこで、技術的には、特に最初の理論的限界を、新たな理論によってブレークスルーする、ということになります。よほどのイノベーションがなければ新たな理論、というところまで行きません。これは大変だ。