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第38回

第38回

 開店休業状態の中ですが、「今しかできない」テーマを探して仕事(らしきこと)をしています。テーマを見つけるのは簡単なのですが、それを一定のアウトプットまでにまとめ上げるのは意外と大変です。

  昨年秋から、TICAD7を受けて、農業(アフリカの食料自給率の向上)に工業の立場から貢献したいと考え、人工衛星によるリモートセンシング画像を使って農林水産業の生産性向上を実現できないかと考えていました。

 実は、私は1987年から1989年まで、通商産業省(現・経済産業省)の宇宙産業課という部署で仕事をしていました。当時の通産省は、「宇宙の産業利用」に向け、①リモートセンシング衛星の開発とそのデータによる資源探査、②無重力下での材料実験をベースにした宇宙環境利用、の二つを政策の柱にしており、まだ二十代だった私も忙しく方々を駆け回っておりました。 

 丁度、私が担当していたリモートセンシング衛星が ERS-1 (Earth Resources Satellite-1 : 日本名は「ふよう1号」)です。当時は、開発途上で光学センサ(カメラですね)のCCD素子の浮遊容量のせいで画像の分解能が当初計画より少し落ちる、とか、データの保存を機械式レコーダ(テープレコーダと同じです)が担っていたので、設計寿命はこれこれしかないぞ、とか色々な問題に直面しました。 

 この衛星が打ち上げられたのは、丁度私の米国留学当時ですが、やはり大変嬉しかったものです(当初は、太陽電池パネルが開かない、とかこれもヒヤヒヤしましたが)。その後、資源開発分野では広域の地質解析のために衛星情報を使うことが主流となり、この分野は日本がリーダー国の一つとなりました。また、日本のJOGMEC(石油天然ガス・鉱物資源機構)という独法では、ボツワナに地質リモートセンシングセンターを設置して、特に南部アフリカ諸国の地質エンジニアへの技術移転を行っています。 

 こういう個人的な経験もあり、是非、アフリカの大きな課題である農業と食料自給率の向上に衛星リモセンを活用してみたいと考えたわけです。調べてみると、土壌中の水分、土質・地質は勿論のこと、作物の作柄・虫害・病気、また林業分野では樹種判定や昆虫動態、水産業分野でも沿岸藻類の状況などに現在の人工衛星データはかなり有効だし、相当数の研究者やエンジニアがそのデータ処理・解析と応用に関わっておられることも分かってきました。 

 色々な知人や先輩方のルートをたどり、10名ほどのこの分野の大家の方々にもお会いでき、昨年12月には非公式の勉強会も開催しました。勿論、何ら予算の裏付けがある訳でもなく、電車代も出さない「手弁当」スタイルです。ようやく報告書の第ゼロ次案みたいなものもできましたので、また皆さんと相談しつつ、タイミングを見て、政府・民間企業・大学・公的研究機関・農林水産業従事者の方々に意見をお伺いするプロセスに入ろうと考えています。普通に仕事していると、まとまった書き物をする暇が無いのですが、まあ今回の禍を転じて福となす、というところまでできるかどうか、ほぼゼロからやってみたいと思います。