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第33回

第33回

 コロナウィルスの脅威が日本社会を揺るがしています。当事務所でもテレワークの導入について議論を始めました。が、まずは、毎度バカバカしい無駄話にお付き合い下さい。

 先日、私は「日本のエアラインに乗っている時はたいてい落語を聴いている」と書きましたが、私は特に熱心な落語マニアというわけではありません。が、幾つか自分の琴線に響く噺はあり、上手いな!と思う咄家も居ます。

 例えば、『竹の水仙』という噺があります。江戸時代の名職人、「左甚五郎」が神奈川の宿で酒ばかり呑み、路銀が尽きた。そこで宿の主人に竹を切らせて作ったのが「竹の水仙」。水につけておくと水仙の花びらが開いてあたりに芳香が漂うという逸品。大名行列で通りかかった細川越中守が名人の作と断じ、従者に「買ってまいれ」。宿屋の主人はそれを甚五郎の言う通りに二百両で売ろうとするが、田舎者の従者はタダ同然に値切ろうとして断られ、殿様から「手打ちにするぞ」と怒られて慌てて三百両で再び買いに走る・・・、というような噺です。良くも悪くも日本の(古き)ものづくりの美学の一面を如実に物語る噺だと思うのですが・・・。なお、この噺は、今は亡き桂歌丸師匠の得意ネタです。歌丸師匠、こういう職人噺、上手いんだよなあ。

 一方、咄家というのは、本来「面白い」ことが第一です。私の小学生時代は、大人たちからは「あんなもの落語じゃない」と言われていましたが、何といっても「昭和の爆笑王」林家三平(勿論、先代の三平師匠です)が一番人気でした。「パンダの好きな食べ物は?・・・パンだ」とか、「母ちゃん、ズボン破れた。・・・またかい?」とか、バカバカしいと言えば強烈にバカバカしい。が、こういうのが速射砲のように出てくると客にドカンドカンとウケる。子供心にああ、いいなあ、と。そういえば先代三平師匠の「古典」落語って、殆ど聴いたことがありません。『源平盛衰記』など、殆ど全面的に脱線。でも面白い。

 勿論、比較的オーソドックスな咄家も大好きです。私が比較的よく聴いていた(CDとかですが)のは、三遊亭金馬師匠(いわゆる「金歯の金馬」の方です)。何より分かりやすい。万人に面白いことを面白く話す名人。『孝行糖』というのが金馬の十八番ですが、これ、ジャズで言えば、ソニー・ロリンズ的な正攻法の面白さというか・・・。普通なのに面白い、っていうやつですかね。以前、仕事で米国ニューメキシコ州に行った時、ニューメキシコ大学の日本学科の先生と落語の話題になり、「僕は先代の金馬が好きだ(“先代”というのが英語で良く分からなかったので、苦し紛れに KIMBA of the previous generation と・・・)」と言ったところ、センセイは流暢な日本語で「ああ、三代目ね!」と。訊くと、日本留学時代、志ん朝師匠に弟子入りしてたとか・・・。それ、早く言ってよ。

 私も、幾つか自作の拙いネタ(小噺か)がありますが、今、「SDGs落語」を構想中です。できたらどこかのお座敷でご披露申し上げようかな、と。え~、おあとが宜しいようで。(恥かきついでに前回の訂正です。ベートーヴェン初期の弦楽四重奏曲は「作品18」です。)