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第142回

第142回

 突然ですが、私がUNIDO東京事務所の所長を務めるのも、あと残り1週間となりました。71日からは、ウィーンのUNIDO本部事務次長として、UNIDO全体の仕事をやることになります。この間、皆様には大変お世話になりました。改めてお礼を申し上げます。

 ほぼ5年間、東京事務所の所長として日本から開発途上国・新興国への直接投資と技術移転の促進の仕事に従事してきたわけですが、率直に申し上げて、本当に成果を挙げるのは簡単ではない仕事でした。

 

 そもそも、投資や技術移転を行う主体は、あくまで民間企業です。民間企業に投資判断をいただくための情報提供や、現地政府(投資庁や投資認可委員会)への交渉のサポート、そして現地パートナー(代理店や合弁相手)探しのお手伝い、というところが我々のできる最大限の仕事ですが、日本企業にとって極めて有望な投資先国と考えていた(今もポテンシャルは極めて大きいと考えている)エチオピアやミャンマーで、それぞれ内戦や政変が起きたり、COVID-19で現地への渡航が大きく制約されたり、ということで、特にこの2年間は思ったように活動できない期間が続きました。

 

 尤も、「形」だけの成果を挙げるのは大して難しいことではありません。投資セミナーや技術移転のためにイベントを開催してプロモートすることは、ある意味我々のルーティンワークですから、それをやることはこれまでの組織の知見をベースとすれば容易なことです。が、それを本当の成果である民間投資や技術移転にまで繋げるには時間もかかりますし、最終的に、我々は民間ビジネスの成功を「保証(guarantee)することはできない」以上、隔靴掻痒の感はどうしても残ります。

 

 話は飛びますが、私は率直に申し上げて、日本の今後にかなり懸念を抱いています。自分も、その原因の1万分の一くらいは負っているのではないかと自戒しているのですが、それにしても、現在のアフリカをはじめとする開発途上国・新興国への投資、新しいビジネスを開拓するスタートアップの数とそこに集まる投資額、大学・公的研究機関の研究者の置かれた状況、若者を取り巻く閉塞感、依然として大きく改善しない女性の社会参加、日本で学ぶ外国人留学生の置かれた立場の厳しさ等を考えれば、これから30年後(まあ、私はその頃にはこの世には居ないでしょうが)の日本という国が直面するであろう状況を「明るい」ものにするには、色々なものを変えていかないといけない筈です。

 

 まあ、愚痴を言っても仕方がないし、出来の悪い評論家になるつもりもないので、まずは我が身の置かれた立場で自分のできることを最大限に進めるしかないのではありますが、そのためには、これまでやってきた範囲を超えて色々なものにチャレンジしないといけませんし、自分が多少は自信を持てる分野については、さらに深く考えていかなければならない、とも感じています。60歳にもなって、自分は何も知らないな・何も分かっていないな、と無力感を感じる毎日ではありますが、まあ、幸いなことにまだ体力も若干残っていますし、国連職員の定年である65歳までは苦闘の日々が続くのだろうと覚悟しています。

バックナンバーはこちらから http://www.unido.or.jp/publications/shocho/