このページをシェアする

第128回

第128回

 ロシアのウクライナ侵攻は依然収束を見ません。このままではウクライナの一般市民の生命・財産に更に甚大な被害が生じます。また、無茶な軍事行動に有無を言わさず動員されているロシアの若い兵士達も、故郷から離れて極寒の中、納得もいかぬまま破壊活動の片棒を担がされては士気も下がり、精神を病む一方でしょう。

 やや旧聞に属する話題ではありますが、221日の国連安保理の緊急会合におけるケニアのキマニ国連大使の演説が世界で話題を呼んでいます。全文を引用したいところですが、紙面の都合もあり、一部だけをご紹介します(日本語訳は、毎日新聞のサイトに掲載されていたものを引用させていただきました)。私は「これこそがアフリカの歴史の上に立った、アフリカの知性だ」と感動しました。是非、皆さんもウェブで探してみて下さい。同大使の英語は平易明快で、噛みしめながらゆっくりと発言しておられるので大変分かりやすいと思います。

「ケニアや、殆どのアフリカ諸国は、帝国の終焉によって誕生した。私たちの国境は、私たちが自分で引いたものではない。ロンドンやパリ、リスボンなど植民地時代のはるか遠くの大都市で引かれたものだ。」
「今でもアフリカ諸国では、国境の向こう側に、歴史的、文化的、言語的に強く結ばれた同胞が暮らしている。」
「もし独立する時に、民族や人種、宗教の同質性(ethnic, racial or religious homogeneity)に基づく国家を追求していれば、何十年も血にまみれた戦争を続けることになっていただろう。」
「その代わりに、私たちは(列強によって引かれた)国境を受け入れ、アフリカ大陸の政治的、経済的、法的な統合(political, economic, and legal integration)を目指すことにしたのだ。」

 これらは、勿論、ロシアによるドネツクとルガンスクの独立の承認に対しての発言ですが、アフリカ諸国の独立に至る厳しい歴史を念頭に置きつつ、より大きな未来を作らんとしているアフリカの意思を明確に示すものと思います。

 ちなみに、皆さんご存じのとおり、国連安全保障理事会は米英仏露中という5ヵ国の常任理事国と任期2年の10ヵ国の非常任理事国(半分の5ヵ国ずつ任期を1年ごとにズラしてある)から構成されています。現時点での非常任理事国は、インド、アイルランド、ケニア、メキシコ、ノルウェー、ブラジル、UAE、ガーナ、ガボン、アルバニアとなっています。国連安保理の決議は拒否権を有する5ヵ国の思惑次第ではあるため、年来、様々な批判もあるところですが、こうした顔ぶれの中で大きな存在感を示したケニアのキマニ国連大使と、その草稿を準備したであろうケニア外務省の方々の知性・理性というものにも深い感銘と共感を覚えます。

 最後に蛇足です。何だか日本の大学入試制度改革で、英語の4技能(読む、書く、聞く、話す)のバランスを再考してヒアリングを増やしたりするのはそれはそれで結構なのですが、こういう立派な演説を20本アタマに叩き込んだ方が「真の知性」が育つんじゃないですかね。おっと、「知性派」とは絶対に見なされていない俺が言ったって説得力無いな~、へへへ。