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第91回

第91回

 67日の日経新聞朝刊15面(グローバル市場面)に、「銅価1万ドル時代」という記事が出ていました。今回は「資源の価格と開発」について書いてみようと思います。

 資源価格というのは、世界の需要と供給、景気や産業構造の変化、需要動向の変化等の要素に左右されます。おそらく一般の人々が資源価格について意識を始めたのは、第一次石油ショック時の「原油価格が1バレルあたり〇〇$に上昇」という報道に触れてからのことだと思います。既に多くの皆さんがご存じの通り、1バレルは約159ℓですが、これは米国東部の油田で生産された石油(原油)がこのサイズの鰊樽に入れられて輸送・取引されていたからですね(なお油田の生産量の単位はバレル/日です)。

 ところで、1970年代~2000年頃までの間の銅価格は10003000$/tでした。銅はだいたい需要の7割は電線向けです。電線の大口需要家は電力事業と大電力ユーザですから、景気が上向けば設備投資が活発化し、銅需要が拡大します。勿論、家電製品にも銅線は多く使われます。この記事にあるとおり、確かに、中国市場が世界の銅需要の相当割合を占めるようになった今世紀以降、銅価格は景気変動を受けつつも右肩上がりで推移してきました。20112月にLMELondon Metal Exchange:ロンドン金属取引所)で1万$/tを超えた時、「バブルか、需給構造の変化か」という議論になったものです。

 ただし、電線というのは「電力」を送るのにも「情報」を送るのにも使われます。一時期、電線メーカーが「情報を送るのは光ファイバーに代替されるのでは?」ということから、銅電線の将来需要に悲観的見通しを示したこともあります。しかし、近年は、ハイブリッド自動車・電気自動車・燃料電池自動車の出現により、電線はこれらのモーター巻線としての需要が拡大しています。また、自動車のみならず、再生可能エネルギー(太陽光、風力等)の殆どは電力として供給されますので、こうした分野での需要増も大きな要素です。となると、カーボンニュートラル実現に向けての大きな鍵は「銅の供給」が握る、ということになります。価格の上昇基調が続くと予測されるのは不自然ではありません。

 銅という鉱物資源は、実は相当に希少です。地殻中の元素の存在比率を示す数値にクラーク数というのがありますが、銅は0.01%。これは全元素中25位ですが、チタン、マンガン、ジルコニウム、クロムといったいわゆる「レアメタル」よりも希少なんですね。日本には、かつて黒鉱(鉱床地質学的には複雑硫化鉱と呼ばれる)と呼ばれる非鉄金属鉱石の鉱山が沢山ありましたから、銅地金は輸入鉱石を使って今も国内で製錬されています。銅の鉱石は主にチリ、ペルー、インドネシア、豪州等から輸入されますが、鉱山での品位(金属分の含有率)は既に0.5%を切っています。つまり、ヤマでは99.5%の石ころを掘りながらお宝を採掘していることになります(貿易は、浮遊選鉱という手法で3割くらいまでに品位を上げた「精鉱」という形態で行われます)。開発コストの安い鉱山は、ほぼ開発され尽くしたようです。ここ30年ほど、新規銅山開発は、カントリーリスクが低く外資の参入促進策を採るチリで主に行われてきましたが、今後は、色々な国の、更に厳しい開発環境にある鉱床に取り組まなければならない時期が来ているように思います。