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第73回

第73回

  ついに緊急事態宣言が延長されましたが、皆さんお元気でしょうか? 感染者数は減少していても、亡くなる方の人数が急増しているのが大変気になります。我々は週に数回程度、ウィーン本部の関係者とオンラインで会議をやる機会がありますが、ウィーンでもロックダウンが長く続き、皆さん外出も殆どできずにフラストレーションが溜まっているようです。

  さて、私も家にいる時間が長くなりますと、これまでに買ったけれど読んでいない本を読んだりします。今回ご紹介するのは、『経営重心』(若林秀樹著・幻冬舎刊)です。前世紀から今世紀にかけてのいわゆる「失われた20年」(いや、既に四半世紀に達しようとしているか・・・)を象徴する日本の特にエレクトロニクス産業の凋落について、何とか定量的・客観的な指標を使って本質を解き明かそうとした本です。

 まあネタバレになりますが、著者は大変著名なエレクトロニクス分野のアナリストであっただけに、この本でも、「経営スピードを表す指標」としてビジネスサイクルの年数を用いる(半導体であればシリコンサイクルの3年、重電なら発電設備サイクルの12年、ケータイならば2年というような)とともに、出荷する「製品のボリュームを表す指標」として製品の年間出荷台数(金額ではないところが重要な点と考えられる)を用いる(原発や大規模プラントであればせいぜい1~2桁、白物家電が7桁弱、コンデンサ等の電子部品であれば10~11桁といったところ)という考えを採っています。また、それぞれの事業ごとの「固有周期」と「固有桁数」を横軸・縦軸にプロットし、事業の売上構成比で加重平均を求めれば、それが企業の「経営重心」になるというわけです。著者は、経営重心は企業の「個性」を表し、それによって業績やリストラの良し悪しもある程度判断できるとしています。

 これは大変明解な考え方だと思います。これまで、日本のエレクトロニクス産業が凋落してきた原因は、「経営スピードが遅い」「デパート型経営でタイムリーな判断ができない」「大規模な設備投資を行う財務的体力が無い」「ハード偏重でソフトを軽視してきたからデジタル時代に追随できない」等、色々な説明がなされてきましたが、そういう現象論はどれももっともらしいが、所詮「結果論」だよなあと私も感じていたからです。

 実は著者の若林秀樹氏は、現在、東京理科大学の技術経営専攻で教鞭を取っておられる私の友人でもあります。私も一度、同大学で半導体の産業政策・通商政策・技術政策・研究開発マネジメントの4側面から見た講義を行わせていただいたことがあり、また、所属する学会(研究・イノベーション学会)の発表会でもご一緒させていただいたことがありますが、常に具体的事例に基づくシャープな視点からコメントをされるので、こちらも一切気が抜けません。

 この本の巻末にもありますが、この考えを他の産業分野に適用するとなると、色々な補正を行わなければならないかもしれません。材料(鉄鋼・化学・非鉄)、自動車、ソフトウェア、産業機械、アパレル、医薬品、食品等。B2BとB2Cでも違うし、サービス産業では更に様相が違うでしょう。それらを真面目に考えてみるのも脳の活性化に好適ですね。