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所長のひとりごと

所長のひとりごと

第3回 2019.06.06

 皆さんこんにちは。5月の下旬は凄く暑い日が続きましたが、6月に入ってちょっと涼しい日が続いています。まあ、入梅も間近ということだと思います。

 先週は、エチオピアの貿易産業大臣が訪日し、私は彼女の「産業政策スタディ・ツアー」の企画者兼添乗員ということでバタバタとした数日間を送りました。ご存知の方も多いと思いますが、同国は「東アフリカの軽工業のハブ」となり、2020年代半ばに中所得国の仲間入りをすることを目指しています。UNIDOとしても、PCPProgramme for Country Partnership)というプログラムの対象国としていち早く指定し、産業政策面での支援を開始しています。

 まあ、言ってみれば「21世紀の Look East 政策」のキックオフとでも呼べるようなスタディ・ツアーにしたいと考え、中小企業金融、中小企業の技術開発支援、中小企業(ものづくり)の現場視察と地方自治体の支援策、日本の技術協力(エチオピアにはEthiopian KAIZEN Instituteという国立機関もあります)、輸出促進といった分野の関係機関をお訪ねし、様々なお話をお伺いすることができました。ショートノーティスであったにも拘わらず、各機関の皆様には大変お世話になりました。

 初日の午前中は、私が「日本の産業政策の歴史と全体像」ということで大変雑駁な説明を行ったのですが、その場で印象的だったのが、「日本政府は、どのように産業界と意思疎通を図っているのか?」ということと、「(政策形成のプロセスにおける)審議会というものの運営は、誰がどう行っているのか? なぜそういうやり方で政策論を議論しているのか?」という2点に議論が集中したことでした。

 前者は、現代の日本では少しクラシック過ぎて産業構造の変化に対応できない部分もあるとの指摘があるのを承知の上で、「業界団体と(省庁の)業界所管部局」の関係や、「業界内の競争と協調」の要素を、また、後者では、これも一概には括れないものの、一体どういう課題がある時に、どういうメンバーを審議会委員として選定し、事務局はどう論点を設定するか、を例を交えつつ説明しました。「産業」の集積が小さいエチオピアでは、そもそも幅広い見地から産業界が政策提言をする、ということをイメージしにくいのだな、と感じました。

 また、大田区の中小企業訪問では、従業員数人規模の企業がどうやって人材を育成し、自動車部品や少量多品種型の機械部品を作っているかを間近で見る機会を得て、ご一行はかなり興味を持たれた様子でした。勿論、ASEAN諸国に日本企業が進出したのと比べれば、エチオピアはそれを取り巻く周辺状況も大きく異なりますので、同じスタイルの産業政策がそのまま有効ということは無いでしょう。が、産業振興を考える上で現場は何より重要な筈。自称・工場見学マニアの私としても「日本の現場を見て何も感じない筈はない」ということを改めて再認識した日でもありました。本件、今後もフォローアップしていくつもりです。

第2回 2019.05.29

 皆さん、こんにちは。このメルマガは、毎週発出することを目標としようと思っています。お暇な方はお付き合い下さい。

 さて、UNIDO東京事務所は、正確には「東京投資・技術移転促進事務所」という名称です。ひたすら途上国・新興国に日本から投資促進、技術移転促進を行うのがミッションです。途上国の産業発展といって、まず最初に思いつくのは労働集約的な産業、だいたいにおいて繊維産業(繊維産業の中にも資本集約的なもの、ハイテクが盛り込まれたものが数多くあるのはこの際置いておいて)です。これは、我々が小学生時代の社会科の授業で習った富岡製糸場や、信州の蚕糸・生糸紡績工場の記憶が強烈だからかも知れません。また、私が経済産業省出身だからかも知れません(ここにも省庁縦割りの弊害が・・・)。

 ところが、UNIDOに入って途上国の人たちと話をすると、最初にターゲットとして上がってくる産業(製造業)というのは、食品加工関係が殆どなのですね。考えてみるとアタリマエかも知れません。人間は誰しも「メシ喰わずには生きていられない」からですね。更に言えば、流通・物流インフラの発展していない国では、地場で入手できる農産品・水産品を加工して食品の保存性を良くする、というのは理にもかなっているし、それが輸出品として外貨を生むチャンスに繋がれば、これは貧困対策としても経済政策としても有効だからですね。

 今年の4月1日から、それまで運営してきた「環境技術データベース(ETDB)」を「STePP(サステナブル技術普及プラットフォーム)」と改称するとともに、新たにアグリビジネスや保健衛生分野の技術も対象とすることとしたのも、こういうことが大きな理由です。

 とは言え、日本の産業界の方々に、アフリカ等で食品加工産業分野に進出しませんか、といきなり持ちかけるのも結構大変な話です。まず食い物というのはその土地の文化・風土に大きく関係します。狭い日本でさえ、長崎県出身の私は「魚の煮付け」と言えばまずアラカブ(カサゴですね。今や高級魚になりましたが・・・)のことを考えますが、瀬戸内出身の妻が思いつくのはメバルです。

 しかし一方で、食品関係のビジネスのいいところは、まず「日銭が入る」ことですね。ということは、キャッシュフローの点では有利な筈です。そして、日本は世界に誇る「食品加工機械」の発達した国です。おそらく食材の種類も調理法のバリエーションも多いからでしょうね。また、衛生管理や鮮度管理のノウハウも発達しています。

 今日、「アフリカと日本の食卓を結ぶ」のは「モーリタニアの蛸」くらいしかありませんが、日本式のコメの栽培も進みつつありますし、アフリカの食材はとても豊かです。そんなこんなで、今風に言えば「アグリビジネス(勿論、食品加工だけでなく上流の農業用資材等も含んでいます)」の分野でも、アフリカをはじめとする開発途上国での日本企業のビジネスチャンスを狙っているところです。

第1回 2019.05.21

 皆さんこんにちは。今日は、TICAD-7(第7回・アフリカ開発会議)をほぼ3ヵ月後に控えて、UNIDO東京事務所が日々取り組んでいる開発途上国・新興国への投資促進の仕事をやりながら感じることを書いてみたいと思います。

 最近、色々なところで「日本企業が途上国ビジネスに乗り出すに際して、リスクを取る能力が低下しているのではないか?」という声を聞きます。先日も、日経新聞社・日経BP社主催の「TICAD7プレビューシンポジウム」に聴衆の一人として参加しましたら、JETROの佐々木理事長が冒頭のご挨拶でそうい趣旨のことを仰っていました。

 私たちのオフィスでは、在京の大使館の方々とも頻繁に交流します。アフリカ各国の在京大使の方々が口々に仰るのは、「日本企業が来て(進出して)くれるのを待っているのに、“遠い”とか“リスクが・・・”という声が多く、いつまでたっても進展しない」ということです。

 また、日本政府でも様々な支援策が講じられています。上記のシンポジウムでは、世耕経済産業大臣が基調講演をされましたが、大臣が打ち出した3点の支援策((1)日本貿易保険(NEXI)が国際金融機関と協調して輸入費用やプロジェクト費用の100%をカバーする。(2)JETROで日本企業とアフリカのスタートアップのマッチング支援を行う。(3)アフリカでの人材育成を進めるためにAOTS(海外技術者研修協会)が第3国を活用した研修を支援する)は、日本企業の「海外事業(この場合にはアフリカ)のリスク」を低減するために日本企業の弱い点を支援するという視点だと感じました。更に、JICAの中小企業支援策等についても、当方のパートナー企業で活用されている方々も多いと承知しています。

 勿論、私たちUNIDOも工夫を重ねています。開発途上国から投資促進機関(IPA)の実務担当者を招いてセミナーや個別企業とのミーティングを行うデレゲート・プログラムでは、そのフォローアップを強化するように努めています。また、アフリカ3か国(アルジェリア、エチオピア、モザンビーク)に配置し、日本企業の現地進出の際の許認可手続きや現地パートナー探しに奔走しているアフリカ・アドバイザーについても現在、4人目(西部仏語圏担当)を近日中にセネガルに配置する予定で人選を急いでいます。

 これからも更に色々な工夫を行っていきたいと思います。皆様宜しくお願いします。