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所長のひとりごと

所長のひとりごと

第12回 2019.08.21

 日本人が残念なことに英語(外国語)をあまり上手く話せないのは世界によく知られた話ですが、特にヨーロッパ系の人たちに「普通の日本人はひらがな、カタカナの他に2000くらいの漢字を使うことができる」という話をすると、とても驚かれます(注:内閣告示の常用漢字:2136字)。

 学校教育を全て英語に、という主張もあれば、「日本語で高度な概念を理解してきたからこそ日本人の知的基盤は作られたのだ」という主張もあります。今回はそういう難しい話ではなく、「漢字で表す外国の国名」の話です。

 最近、駅の売店での夕刊紙の見出しに「米朝絶縁」「米朝危機」というような文字がありビックリします。落語ファンである私は、つい「あれ、(三代目)桂米朝師匠って、数年前に亡くなられたよなあ」と思ってしまいますが、「トランプ大統領が・・・」という文字を見てようやく己の不明を恥じる、という具合です。 

 20数年前、ASEAN関係の仕事をしていた頃、最初に覚えさせられたのが国名の漢字での略称でした。泰(タイ)、越(ベトナム)、比(フィリピン)等は知っていても、星(シンガポール)、尼(インドネシア)、緬(ミャンマー)等はその時に初めて覚えました。来週にはTICAD7本番を控え、段々忙しくなってくると、我々も国名を簡略に記述したくなります。アフリカの国名は漢字の略称ではどう書くのかな、と調べてみると、予想通り、あまりありません。

 Wikipedia には「エジプト=埃」「コンゴ(民主共和国/共和国)=公」「チュニジア=突」等というのも載っていますが、あまりこういう表記を見たことがありません。まあ「コートジボワール=象牙海岸」はそのものズバリですからいいとしても(小学生時代、世界地図には、象牙海岸と書いてあった記憶があります)、略字はなくとも、「阿爾及=アルジェリア」とか「烏干達=ウガンダ」とか「肯尼亜=ギニア」とか「莫三鼻給=モザンビーク」となると、まるで判じ物です。やはり身近な漢字で端的には表しにくいのがアフリカと言えそうです。これには勿論、アフリカ諸国が1960年代以降に続々と独立を果たした、という歴史も大いに関係していると考えられます。

 こういうことを調べていると、つい脱線したくなるのが私の悪い癖です。ヨーロッパの国名の漢字略称は、英仏独伊西蘭葡墺・・・等とおなじみのものが並んでいますが、何とアイスランドは「氷」だそうです。何だかあまりにストレートというか・・・。確かに、すぐ分かる。尤もUNIDO の任務は途上国の産業発展ですから、直接アイスランドに行く機会は無さそうですが、ご存知のとおり、この国は北米プレートとユーラシアプレートの持ち上がる線上にあり、地熱資源が豊富です。再生可能エネルギーの開発・利用のモデルとして、SDGsの達成やアフリカをはじめとする開発途上国のエネルギー供給のあり方を考える際にも参考となるのではないかと考えています。

第11回 2019.08.07

 暑中お見舞い申し上げます。いやあ、本当に暑いですね。熱中症等にお気をつけ下さい。

 いよいよTICAD7もあと3週間後です。今日は、我々の主催するサイドイベントの一つをご紹介します。先日Webでも発表したのですが(https://www.unido.or.jp/coming/7551)、830日(金)の10:30~16:00まで(途中12:30~14:00は昼休み)、ナビオス横浜(横浜国際船員センター)2階・カナールの間で、「アフリカ企業・UNIDOアドバイザーとの交流・商談会」を開催致します。TICADのメイン会場から10分程ですので、多くの企業の方々のご来場をお待ちしております。

 今回のTICAD7では、当事務所がアフリカに設置しているアフリカ・アドバイザー4人に、日本企業とのパートナーシップを期待する現地有力企業(トータル10社程度)が同行いたします。この機会に、アドバイザーの担当するアルジェリア、エチオピア、モザンビーク、ルワンダ、セネガル等の企業と、ご関心をお持ち日本企業の方々で直接の対話・意見交換の場を提供させていただこう、という趣旨です。

 おっと、申し遅れましたが、81日からは、新たにセネガルにも新アドバイザーを設置しました。アイサトゥ・ンジャイさんという女性で、これまでにネスレや大手タバコ企業での勤務経験を持っています。先々は近隣の仏語圏での日本企業支援も担当してもらおうと思っています。日本企業にとって、言葉の壁(フランス語)もあり、アクセスの難しかった諸国への投資促進の力になってくれると期待しています。また、当日は、アドバイザーは設置していませんが、ザンビアからも数社の企業が参加致しますので、ご期待下さい。

 これまでに参加が決定した企業には以下が含まれます。アルジェリアからは、家電製品等の組み立てを行なうBomare Company SARL、エチオピアからは、ICTスタートアップのPeragoInformation Systems PLC、鉄鋼・化学・不動産・建設など多岐に展開する有力コングロマリット Sisay Investment Group からWalia Steel Industry PLC、更に産業洗浄や水処理あるいは食品・飲料業に使用する化学品輸入の YANET Trading PLCの3社が、モザンビークからは鉄道・石油・ガス等のインフラ案件を担当する TATOS BOTAO, LDAと鉄道等のメガプロジェクトに参加している Zero Investimentos SAが、という具合です。近日中にセネガルから来日する2社の詳細も公開します。

 上記Webサイトでは、参加申し込みフォームでご参加の登録を行なっております。また、他の参加企業が決まりましたら、Webで更にご案内致します。これまでは「繋がっていなかった」企業同士を結びつけるのが第一の目的ですが、新たな出会いもあると思います。また、彼らには、当日(30日)以外にも色々な形で日本企業を訪問させていただいたり、日本のものづくりの「現場」を見学させていただいたり、というプログラムを予定しています。良い出会いが生まれることを期待しています。

第10回 2019.07.31

 ようやく関東も梅雨明けです。今年の梅雨は長かったですね。雨も沢山降りましたね。

 毎年、夏になると「あ~海に行きたい」「スイカ食べて昼寝したい」といった子供のような発想しか出てこないのですが、社会人になって34年目となった今も、(本当は殆ど休めないくせに)夏休みはいつも楽しいことをやりたいと期待あるいは妄想します。

 拙宅の猫の額ほどの庭にシマトネリコの木が生えています。そこに毎朝、カブトムシが樹液を吸いにやってきます。先週木曜は9匹、金曜は11匹確認しました。なぜか今年初めてそれを認識しました。去年までもやってきていたと思うんですが・・・。隣家の幼稚園児の男の子が目を丸くしてそれを観察しています。

 小学生時代、私は毎日海で泳いでいました。長崎港の沖には鼠島という小さな島があり、そこでは毎年鼠島水泳道場というのが開催されていました。今は埋め立てられて残っていませんが、そこでは何故か肥後細川藩の古式泳法の流れを汲む泳ぎを教えられていました。古式泳法といっても武士・忍者のそれですから、潜る時にはアタマから潜ると音がして敵方に発見されるから息を吐いて足から沈め、とか、立ち泳ぎしたまま殿様の前で書を披露する練習、だとか、です。よくも毎日行っていたな、よほど暇だったのかな、と今となっては思いますが、帰り道のアイスクリームを含め、ナンだか楽しかったのだろうと思います。

 夏休みと言えば、「自由研究」ですね。小学生時代、昆虫採集、貝類採集、植物標本作り、岩石・鉱物採集から、はてはお絵かき、工作、飼育日記の類まで。およそ考えられるものは一通りやりました。まあ好奇心旺盛だったのでしょうが、親もちょくちょく手伝ってくれていたような記憶があります。これを自分の子供と一緒にやろうとしても、なかなか興味を持ってくれないのですね。やれコイルの巻き数の違う電磁石を作ったから実験しよう、だとか、伊豆へ海水浴に行った際に採ってきたイソガニやウメボシイソギンチャクを水槽で飼おう、とか色々持ち掛けても、子供はTVゲームに夢中で、結局、私が全部やることになります。

 これも時代の変化だし、親の個人的な趣味・嗜好を子供に押し付けてもいかんな、と思いますから仕方ないのですが、実はこれ、自分でやると結構面白い。しかも子供の頃と違って多少は財力もありますから、色々な実験やら工作の材料をネット通販でバンバン買っても文句を言われない。というので(父)親が一方的に熱中してしまったりします。こりゃ本当に子供だ。

 とは言え、今年の8月末には横浜でTICAD7が開催されますから、あまりノンビリと夏休みをとっている訳にも行きません。子供も大きくなり、部活だ塾だと忙しいので「自由研究」に勤しむのも憚られます。また、いつもはこの時期、本国に長期帰国されることの多いアフリカ各国の在京大使閣下も今年は東京でお仕事のご様子です。夏休みは9月にとることにしよう、と割り切って(張り切って?)仕事することにします。

第9回 2019.07.24

 今年の梅雨は長雨ですね。梅雨明けも気になりますが、大雨で災害に遭われた方にはお見舞い申し上げます。

 今月の始め、デレゲート・プログラムでケニアの KenInvest(ケニア投資庁)の担当者を招聘しました(http://www.unido.or.jp/outcome/delegate/7465)。同国を対象としたデレゲート・プログラムはほぼ3年ぶりでしたが、担当者は、2010年から同庁の投資促進官を務めており、ジャパンデスク及び東アジアからの投資促進担当として働いています。2016年のTICAD VI でも「日本アフリカビジネスフォーラム」や「ケニアハウス」の運営に従事しており、日頃から当事務所の担当者と連絡を取り合っていたので大変円滑に実施でき、ほっとしています。

 我々の事務所は(お見えになられた方は良くご存知でしょうが)ごく小規模ですので、デレゲートの訪日中はオフィスで一緒に打ち合わせをします。毎週月曜朝の定例ミーティングにも参加してもらい、その時に、日本企業向けセミナーでのプレゼンの予行演習を必ずやります。私がその時に注文するのは、大体「(プレゼン資料中に)一人当たりGDPと人口は目立つように書いてくれ(そうでないと市場イメージが湧かない・・・)」「外資への優遇策は、単に優遇策がありますよ、ではなくて具体的に例示してくれ(そうでないと日本企業にとっての魅力が伝わらない・・・)」「戦略的に誘致したい産業セクターがある場合には、単にそれを列挙するのではなく、なぜその産業が戦略セクターなのか、その背景となる政策や根拠を示してくれ(そうでないとどの程度現実的なものかどうかが判断できない・・・)」というようなことです。

 良いデレゲート・プログラムを実現するカギの一つが、その国の投資環境に関するデレゲートからの vivid な情報提供であることは言うまでもありません。ケニアからのデレゲートは実にこの点に関して熟達しており、我々の意図を汲んで分かり易くインパクトのあるプレゼンをやってくれました。

 20年ほど前は、デレゲートは数ヶ月(!)日本に滞在することも多かったと聞きます。場合によっては1年ほど滞在する場合もあったとか。今は電子メールとインターネットがあるおかげで仕事は圧倒的に速く進むようになりましたが、デレゲートの滞在期間も1~2週間になりました。

 とは言いつつも、時代が変わっても(と言うと凄いオッサン臭い感じがプンプンしますが・・・)、投資促進には現地の生きた情報と人脈が重要なのは昔と変わりません。我々にとっては事務所開設当時から取り組んでいるデレゲート・プログラムですが、時代の変化は反映しつつも、泥臭く、粘り強くやっていかなければならないし、フォローアップについてもこれまで以上に力を入れなければならないと考えています。幸いなことに、当事務所のスタッフは皆スマートに仕事をしていますが、「泥臭い」スタイルも結構板に付いて来ています。乞うご期待、というところです。

第8回 2019.07.16

 今回は、訂正からひとつ。前回、「黒ワインや青ワインは無い」と書きましたが、二人の読者の方から「フランスのある地方には、濃厚な赤ワインで黒ワインと呼ばれるものがある」、「スペインには青ワインというものがあり、本当に青い」というご指摘を頂きました。有難うございます。先週は Global Manufacturing Industrial Summit (GMIS) というのに参加するため、ロシアに出張していたのですが、街で入ったイタリアンレストランに Vino Verde というのがあるではありませんか! 頼んでみると白ワイン。完熟前のブドウを使ったものを「緑のワイン」と表記しているのですね。この他、黄色ワインやオレンジワインもあるとか。浅学非才を恥じる毎日です。

 さて、私が滞在していたのはシベリアのウラル地方、スベルドロフスク地区のエカテリンブルグという都市です。ウラル随一の工業都市で、上述のGMISの開会式にはプーチン大統領も来賓として参加していました。彼の基調講演で非常に印象に残ったのが、「ロシアの平均気温の上昇ペースは世界平均の2倍である」という、温暖化問題への取組みへの「本気」を感じさせる発言があったことです。大産油・ガス国で大産炭国でもあり、製造業でもエネルギー多消費型の比率が高い筈のロシアにしてこの危機感、やはり世界は動いていると感じた次第です。

 そこでのテーマの一つになっていたのが Nature Inspired Technology。まあ数年前から日本でも大きな話題になりましたが、良くある例としては「飛行機の形と鳥の形」、「蓮の葉の表面上の細かい毛が水滴をはじく」、「クジラのヒレの形が風力発電の風車のブレードにも応用されている」というようなものです。私もこういう話は大好きですが、かつて、私が勤務していた産総研という国立研究所でこういう研究をしている研究者を数えてみたら約50人をリストアップできました。研究者の総数が2,300人ですので一大勢力です。調子にのって「一つの研究組織を作るか」とも考えたのですが、個別の研究を見てみると、実はあまり「一つにまとめる意味」が見いだせない。よく考えてみるとそれは当然で、「生物の形や機能は、進化の過程で最適化されてきている」のだから、そこから発想のヒントを得て新しいものを作る、というのは人間としてはアタリマエのことなのですね。言ってみれば「研究の中身」ではなく「研究の方法論(の一つ)」に過ぎないのだな、と気づき、拙速の思い付きでコトを始めるのを止めたことがあります。

 また、このイベントの中の UNIDO Roundtable という催し物の中では、投資促進を「専門家・個人の時代」、「パソコンの時代」、「インターネットの時代」、「人工知能の時代」と4つに区分し、Investment Promotion 4.0 の時代がついに到来した、という提案がUNIDOのリー事務局長からなされました。個人的には、パソコン出現前はもうちょっと細かく分けられるんじゃないの、と思いつつも、世界に溢れている情報の処理とリスクの低減にAIはもう少し使える筈だよな、とも思っていたところで、片棒を担いできました。(尤も、私はパネルでは人工知能礼賛ではなく「世の中の全ての事象は analog なのだから、AIによってdigital (cyber) が精緻になればなるほど、それを実現する analog (real) も同時に大事になるはずだ」ということを言ってきたのですが・・・。)

第7回 2019.07.05

 最近、「分かりやすい話」とは何だろう、と考える機会が多くなりました。

 先日参加した、駐日モロッコ王国大使館とJICA主催の名古屋での「モロッコ王国投資セミナー」でも、在京大使館のブフラル特命全権大使が、同国の経済状況や投資促進策について素晴らしい講演をされました。ご存知のとおり、モロッコは、国王自らのイニシアティブで投資環境整備と外資への優遇策が積極的に講じられていますので、日本からも自動車部品産業をはじめとして60数社が進出する、という状況になっています。我々の事務所も、かねてからデレゲートのハッサーニ氏(前・モロッコ投資庁、現・モロッコ航空産業フリーゾーンの局長)と連携し、矢崎総業さんのワイヤハーネス工場の進出のお手伝いをしたりしたことがあります。

 ブフラル大使は、分かりやすいスライドと、非常に魅力的なモロッコ紹介ビデオを使ってご説明されたので、参加者の皆さんにも大きなインパクトを与えたのではないかと思いますが、やはり「中身が良い」と「分かりやすい」プレゼンになるのだと、今更ながらアタリマエのことを感じた次第です。

 私は、UNIDO東京事務所長に着任する前、産業技術総合研究所という国立研究所の役員をしておりました。そこでの上司(トップ)は、元SONYの中鉢良治理事長ですが、彼がしみじみこう仰っていたことを思い出します。「自分も研究者出身だが、研究者って、『これはりんごですか』と聞いても『みかんではありません』と答える人、多いよね。。。」確かに、研究者は「検証されていないことについて安易に書かない、言わない」ことが最も大事なので、そういうことは往々にしてあります。が、一般の人から尋ねられたら『こういう条件が揃えばりんごになる可能性がありますが、こういう条件下ではみかんにはならないということまでは検証されています。いずれにせよ、こういう方向での更なる研究が必要になります』くらいは言ってほしいなあ、というのも度々経験したことではあります。

 昔、ある作家が日本の航空会社の飛行機で「ワインは何がありますか」とキャビンクルーさんに尋ねたところ「赤と白がございます」と返答されて「そりゃねえだろ!」と憤慨した話を週刊誌か何かで読んだ記憶があります。確かに「青ワイン」とか「黒ワイン」が無いのは私でも知ってますが(あったりして・・・(汗))、相手によって「白はブルゴーニュ、赤はナパバレーがございます」とか、更には「白はシャブリで、シャトーマルゴーの2002年モノです」とかが期待されている場合もあるのだろうな、と思います(まあ、機内でそこまで期待するのはちょっとやりすぎだろうとも思いますが・・・。なお、私はワイン通では全然無いので、上記の例は完全に出鱈目・出まかせです。)。

 講演等をする際には、「相手が中学生だと思って話せ」という格言(?)がありますが、なかなかそこまでは難しいと思いつつ、「あんたの話、何だか全然わかんなかったよ」と言われないように精進したいものです。

第6回 2019.06.28

 止せばいいのに、頼まれると断るのが面倒なので色々な仕事をお引き受けしています。その中には大学で若い人に講義をする仕事、というのも含まれます。ある大学では、それこそ学部の1年生を対象として Introductory Environmental Studies(正式名称はもう少し長いですが)なんてのを講義してたりします。しかも英語で・・・。

 学部の1年生というのは、つい数ヶ月まで高校生だった訳で、まあ自分の40年近く前の姿を見ているのと同じようなものですが、これが我々の若い頃とだいぶ感覚が違うことを思い知らされます。依頼を受けた時に、日頃、瞬発力系の生き方をしている私も、珍しく何を講義するか長考しました。その時アタマに浮かんだのが、「まずは最近急速に話題になっている海洋プラスチック問題を採り上げよう」ということでした。多分、身近な環境問題として興味を持ってくれるのではないかと。

 まあ、教科書と呼べるものも無いので、色々な所から資料を引っ張り出します。字が沢山書いてあるものよりもビジュアルに訴えるものが講義では使いやすい訳で、そうなると、皆さんもおそらくお馴染みの「海亀に魚網がからみついている写真」「プラスチック製の綿棒にタツノオトシゴが絡み付いて浮遊している写真」「洗剤キャップを住処にするヤドカリの写真」等が登場してきます。それにもう1枚印象的だったのが、1955 年の Life誌上に掲載されたという、いかにもアメリカン物質文明を享受せんがごとき若夫婦と小さなお嬢さんが使い捨てのプラスチック容器を放り投げている写真で、おそらくこれを再掲載した National GeographicJune 2018)が付けたと思しき an American family celebrates the dawn of Throwaway Living, thanks in part to disposable plastics というキャプションがあります。

 たかだか60年程度昔なだけなのに、我々の先達は、よもや投棄されたプラスチックが海洋に流出して色々な問題を発生させているとは想像もしなかった訳です。学生に、「産業界による対応策の事例を集めてそれを評価しなさい」という課題を出してみると、まあ「評価」のところは所詮高校を出たばかりという感は否めませんが、「事例収集」では色々な事案を教えてくれます。ご承知のとおり、海洋への排出量の多い上位国はアジア諸国ばかりですが、どこでも大きな話題になっていて流通・外食産業を中心に色々な試みがなされているようです。例えばベトナムのスーパーでは、レジ袋の代わりに「バナナの葉」が包装に使われている(というか、バナナの葉に戻した、ということだと思いますが)等。

 私はどうしても「既に捨てたものは回収して燃やすしか無いけれど、これから使う新しいモノは生分解性(特に海洋分解性)プラスチック製かバイオ原料素材にするしかないよなあ」と思ってしまいますが、所変われば品変わる、ということもよく分かります。今の学生は「環境コンシャス」でとてもこのような話題によく喰いついて来ます。これまで私が講義で話したのは、奈良の大仏建立と環境問題、産業起源の公害の代表例としての水俣病、アラル海の消滅と国土開発、それに地球温暖化とエネルギー消費の問題等ですが、これからは資源の希少性と環境問題、途上国の経済開発と環境保全等についても話そうと考えています。学生たちの反応がまた楽しみです。

第5回 2019.06.20

 さて、梅雨真っ只中ですが、冷たい雨が降ったり、好天に恵まれたりという気まぐれな天候の中、皆さんお元気に過ごされているでしょうか。

 私や当事務所を含め、アフリカ関係の仕事をしている人たちにとっては、今年は何と言ってもTICAD77th Tokyo International Conference on African Development)~アフリカ開発会議~が横浜で828日~30日に開催されますから、まあ夏休みはなかなか厳しいところです。

 先々週、モーリシャスの経済開発庁(EDB)から2人の職員が来日し、当方で「デレゲート・プログラム」を主催しました。65日にJETROと共催で開催したセミナーには、主として民間企業から約100名のビジネスパーソンに参加いただき、モーリシャスの投資・ビジネス機会や最新の投資環境について紹介が行われました。(http://www.unido.or.jp/outcome/seminars_events/7298

 モーリシャスは、AUに加盟しているインド洋上の島国です。人口は120万人程度。かつては砂糖や繊維製品の生産で経済開発を行っていましたが、寧ろ、現在では、ICTや金融セクターをキーにした「(大陸)アフリカへのゲートウェイ」としての性格を強めようとしているのが最大の特徴です。デレゲート・プログラムを終了して彼らとインド料理屋で打ち上げをやっている間にも色々な意見交換を行いましたが(二人ともインド系でした)、彼らが「物理的にモーリシャスに人が来なくても、ICTも金融のネットワークも、EUや米国とのFTAもあるから、色々なビジネスが展開可能だ。この地政学的な位置を逃すのは大きな損失だ」と言っていたのが印象的でした。

 UNIDOは、「開発途上国の経済が発展せず貧困が放置されるのは、その産業構造に問題があるからだ。一次産品に依存するのではなく、それに付加価値を付ける工業振興が重要だ」という問題意識で設立された国際機関ですので、どうしても、我々もこれまでは製造業の投資促進を最重点としてやってきたのですが、確かにモーリシャスの最大の「経営資源」は何かと言えば、治安や経済運営指標の良さに加えて「地政学的な位置」なんですね。それを改めて実感した1週間でした。

 さて、モーリシャスは、8月から東京にEDBの事務所を開設するべく準備を進めています。JETROさんが入っているビルで仕事をするそうですから、アクセス抜群ですね。この開設に当たってJETROさんと我々の事務所の担当者が色々サポートをしています。おそらくTICAD7に併せて同国の首脳がお見えになるでしょうから、そこで「モーリシャス経済開発庁、JETROUNIDO東京事務所の triangle formation で賑々しく Launch が出来るとイイね!」というのが私たちの合言葉になっています。日程が決まったら、皆さんにもご案内します。

第4回 2019.06.13

 皆さんこんにちは。たまには、仕事と少し離れた話題も書いてみたいと思います。

 日頃、色々な会合や打ち合わせに出る際に、タクシーに乗る機会は結構多い方だと思います。タクシーの中でディスプレイを見ていると、色々な新しいサービスが出現していることに気づきます。最近多いのが、中途採用などのリクルーティングや人事評価に関するICT系サービス。どこでも事情は同じと見え、「どうしたら自社にピッタリの優秀な人材を集められるか?」「どうしたら従業員からの不満が出ず、かつ適切なインセンティブを付与できるような人事評価ができるか?」といったことをICTシステムで解決しようというサービスです。

 UNIDOでも、色々な機会に職員、アシスタント、インターンの募集をします。国際機関で開発途上国の工業化のために働きたいと考えている人はこんなに多いのか、と実感する瞬間です。中には物凄い経験と実績をお持ちの方が応募してこられることも少なくありません。何度かの面接(リアルでやることも、遠隔地の方であればオンラインでやることもありますが)を経て決まっていく訳ですが、その過程では、断腸の思いでお断りせざるを得ない場合もあります。何とかして、当事務所でなくとも他に適当なお仕事を紹介できないかと悩むことも度々です。

 また、勿論、当事務所の採用告知に応じて応募される方には優秀な男性も多いですが、実はかなりの場合、極めて優秀な、しかもその時点では決まった職業をお持ちでない女性が沢山応募してこられます。そういう状況を見るたびに「日本は12千万人というけれど、実際は半分の6千万人で戦っているのと同じじゃないか?」と思ってしまいます。私は、科学技術(理工系の研究開発)の仕事に関わっていた時期もかなり長いのですが、その時から、「女性の研究者をいかに増やすか?」というのは大きな課題でした。今も至るところでこの課題はとても解決したとは言えない状況ですが・・・。

 ジェンダーの問題ばかりではありません。上述のとおり、日本の人口は12千万人ですが、アメリカは(この数年はかなり状況に変化がありますが)世界中から優秀で野心のある人間を受け入れ、活躍させます。極端に言えば、日米では6千万人vs76億人という「母集団」の差があり、数字だけ見れば人口比の1:2どころではなく、むしろ1:100に近いわけです。これがイノベーションの世界での日米のプレゼンスの違いを生んでいる要因のひとつではないかと思います。

 30年近く以前、アメリカに留学していた時代、クラスメイトから「この国では、もはやchairmanfiremanombudsman、といった言葉は少なくとも社会的には存在しない。chairpersonfirepersonombudsperson だ」と聞き、珍しくピンと来た私は「へ~、じゃあ俺たちはもはやhumanではなく huperson なのだな?」 と聞き返してウケを狙いましたが、どうも日本の状況はそういう冗談の言える段階ではなさそうです。(あ、凄く真面目な話になってしまった・・・。)

第3回 2019.06.06

 皆さんこんにちは。5月の下旬は凄く暑い日が続きましたが、6月に入ってちょっと涼しい日が続いています。まあ、入梅も間近ということだと思います。

 先週は、エチオピアの貿易産業大臣が訪日し、私は彼女の「産業政策スタディ・ツアー」の企画者兼添乗員ということでバタバタとした数日間を送りました。ご存知の方も多いと思いますが、同国は「東アフリカの軽工業のハブ」となり、2020年代半ばに中所得国の仲間入りをすることを目指しています。UNIDOとしても、PCPProgramme for Country Partnership)というプログラムの対象国としていち早く指定し、産業政策面での支援を開始しています。

 まあ、言ってみれば「21世紀の Look East 政策」のキックオフとでも呼べるようなスタディ・ツアーにしたいと考え、中小企業金融、中小企業の技術開発支援、中小企業(ものづくり)の現場視察と地方自治体の支援策、日本の技術協力(エチオピアにはEthiopian KAIZEN Instituteという国立機関もあります)、輸出促進といった分野の関係機関をお訪ねし、様々なお話をお伺いすることができました。ショートノーティスであったにも拘わらず、各機関の皆様には大変お世話になりました。

 初日の午前中は、私が「日本の産業政策の歴史と全体像」ということで大変雑駁な説明を行ったのですが、その場で印象的だったのが、「日本政府は、どのように産業界と意思疎通を図っているのか?」ということと、「(政策形成のプロセスにおける)審議会というものの運営は、誰がどう行っているのか? なぜそういうやり方で政策論を議論しているのか?」という2点に議論が集中したことでした。

 前者は、現代の日本では少しクラシック過ぎて産業構造の変化に対応できない部分もあるとの指摘があるのを承知の上で、「業界団体と(省庁の)業界所管部局」の関係や、「業界内の競争と協調」の要素を、また、後者では、これも一概には括れないものの、一体どういう課題がある時に、どういうメンバーを審議会委員として選定し、事務局はどう論点を設定するか、を例を交えつつ説明しました。「産業」の集積が小さいエチオピアでは、そもそも幅広い見地から産業界が政策提言をする、ということをイメージしにくいのだな、と感じました。

 また、大田区の中小企業訪問では、従業員数人規模の企業がどうやって人材を育成し、自動車部品や少量多品種型の機械部品を作っているかを間近で見る機会を得て、ご一行はかなり興味を持たれた様子でした。勿論、ASEAN諸国に日本企業が進出したのと比べれば、エチオピアはそれを取り巻く周辺状況も大きく異なりますので、同じスタイルの産業政策がそのまま有効ということは無いでしょう。が、産業振興を考える上で現場は何より重要な筈。自称・工場見学マニアの私としても「日本の現場を見て何も感じない筈はない」ということを改めて再認識した日でもありました。本件、今後もフォローアップしていくつもりです。

第2回 2019.05.29

 皆さん、こんにちは。このメルマガは、毎週発出することを目標としようと思っています。お暇な方はお付き合い下さい。

 さて、UNIDO東京事務所は、正確には「東京投資・技術移転促進事務所」という名称です。ひたすら途上国・新興国に日本から投資促進、技術移転促進を行うのがミッションです。途上国の産業発展といって、まず最初に思いつくのは労働集約的な産業、だいたいにおいて繊維産業(繊維産業の中にも資本集約的なもの、ハイテクが盛り込まれたものが数多くあるのはこの際置いておいて)です。これは、我々が小学生時代の社会科の授業で習った富岡製糸場や、信州の蚕糸・生糸紡績工場の記憶が強烈だからかも知れません。また、私が経済産業省出身だからかも知れません(ここにも省庁縦割りの弊害が・・・)。

 ところが、UNIDOに入って途上国の人たちと話をすると、最初にターゲットとして上がってくる産業(製造業)というのは、食品加工関係が殆どなのですね。考えてみるとアタリマエかも知れません。人間は誰しも「メシ喰わずには生きていられない」からですね。更に言えば、流通・物流インフラの発展していない国では、地場で入手できる農産品・水産品を加工して食品の保存性を良くする、というのは理にもかなっているし、それが輸出品として外貨を生むチャンスに繋がれば、これは貧困対策としても経済政策としても有効だからですね。

 今年の4月1日から、それまで運営してきた「環境技術データベース(ETDB)」を「STePP(サステナブル技術普及プラットフォーム)」と改称するとともに、新たにアグリビジネスや保健衛生分野の技術も対象とすることとしたのも、こういうことが大きな理由です。

 とは言え、日本の産業界の方々に、アフリカ等で食品加工産業分野に進出しませんか、といきなり持ちかけるのも結構大変な話です。まず食い物というのはその土地の文化・風土に大きく関係します。狭い日本でさえ、長崎県出身の私は「魚の煮付け」と言えばまずアラカブ(カサゴですね。今や高級魚になりましたが・・・)のことを考えますが、瀬戸内出身の妻が思いつくのはメバルです。

 しかし一方で、食品関係のビジネスのいいところは、まず「日銭が入る」ことですね。ということは、キャッシュフローの点では有利な筈です。そして、日本は世界に誇る「食品加工機械」の発達した国です。おそらく食材の種類も調理法のバリエーションも多いからでしょうね。また、衛生管理や鮮度管理のノウハウも発達しています。

 今日、「アフリカと日本の食卓を結ぶ」のは「モーリタニアの蛸」くらいしかありませんが、日本式のコメの栽培も進みつつありますし、アフリカの食材はとても豊かです。そんなこんなで、今風に言えば「アグリビジネス(勿論、食品加工だけでなく上流の農業用資材等も含んでいます)」の分野でも、アフリカをはじめとする開発途上国での日本企業のビジネスチャンスを狙っているところです。

第1回 2019.05.21

 皆さんこんにちは。今日は、TICAD-7(第7回・アフリカ開発会議)をほぼ3ヵ月後に控えて、UNIDO東京事務所が日々取り組んでいる開発途上国・新興国への投資促進の仕事をやりながら感じることを書いてみたいと思います。

 最近、色々なところで「日本企業が途上国ビジネスに乗り出すに際して、リスクを取る能力が低下しているのではないか?」という声を聞きます。先日も、日経新聞社・日経BP社主催の「TICAD7プレビューシンポジウム」に聴衆の一人として参加しましたら、JETROの佐々木理事長が冒頭のご挨拶でそうい趣旨のことを仰っていました。

 私たちのオフィスでは、在京の大使館の方々とも頻繁に交流します。アフリカ各国の在京大使の方々が口々に仰るのは、「日本企業が来て(進出して)くれるのを待っているのに、“遠い”とか“リスクが・・・”という声が多く、いつまでたっても進展しない」ということです。

 また、日本政府でも様々な支援策が講じられています。上記のシンポジウムでは、世耕経済産業大臣が基調講演をされましたが、大臣が打ち出した3点の支援策((1)日本貿易保険(NEXI)が国際金融機関と協調して輸入費用やプロジェクト費用の100%をカバーする。(2)JETROで日本企業とアフリカのスタートアップのマッチング支援を行う。(3)アフリカでの人材育成を進めるためにAOTS(海外技術者研修協会)が第3国を活用した研修を支援する)は、日本企業の「海外事業(この場合にはアフリカ)のリスク」を低減するために日本企業の弱い点を支援するという視点だと感じました。更に、JICAの中小企業支援策等についても、当方のパートナー企業で活用されている方々も多いと承知しています。

 勿論、私たちUNIDOも工夫を重ねています。開発途上国から投資促進機関(IPA)の実務担当者を招いてセミナーや個別企業とのミーティングを行うデレゲート・プログラムでは、そのフォローアップを強化するように努めています。また、アフリカ3か国(アルジェリア、エチオピア、モザンビーク)に配置し、日本企業の現地進出の際の許認可手続きや現地パートナー探しに奔走しているアフリカ・アドバイザーについても現在、4人目(西部仏語圏担当)を近日中にセネガルに配置する予定で人選を急いでいます。

 これからも更に色々な工夫を行っていきたいと思います。皆様宜しくお願いします。