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イベントレポート:レジリエンス(回復力)は内向きでは達成できない ※録画映像視聴可能

イベントレポート:レジリエンス(回復力)は内向きでは達成できない ※録画映像視聴可能

2021.01.12

※録画映像はこちらよりご視聴頂けます。

2020年12月15日、ウィーン– 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)はグローバリゼーションを試しています。これに関連し、国連工業開発機関(UNIDO)とキール世界経済研究所(IfW Kiel)の共同イニシアチブで開催された「工業化と国際化に関するフォーラム」第5回は、グローバルバリューチェーンに対するリスクを評価し、そのレジリエンス(回復力)を高めるための戦略策定に焦点が当てられました。今年のフォーラムは、「岐路に立つグローバリゼーション:グローバルな貿易とバリューチェーンにおけるリスク、回復力、再調整」というタイトルで開催され、60か国以上から300人以上の参加者が集まりました。

開会の言葉で、UNIDOの李勇(LI Yong)事務局長は「今回のパンデミックにより、確立されていた経済システムのあらゆる部分が精査されました。国際的な生産、貿易、投資の流れを基軸とし、何百万もの人々に経済的機会を提供しているグローバリゼーションが疑問視されてしまっています。」と述べました。

李事務局長は、今回の世界的大流行によってサプライチェーンに混乱が巻き起こったが、企業はサプライチェーンの回復力を高めることができると強調しました。 「サプライチェーンを短縮して地域事業を強化したり、消費者との距離を縮めることは、サプライチェーンの回復力を高めるための戦略のひとつだと考えられます。しかし、その回復力は自給自足を実現する為に求められているわけではなく、また地域統合の強化は反グローバリズムから来ているものではありません」と述べました。

キール世界経済学研究所のフェルバーマイヤー(Felbermayr)教授は、「2020年春には懐疑論が高まっていましたが、今日、私たちが見た特定の問題は解決されていることがわかります。個人防護具はもはや不足していません。」と述べました。彼はさらに、新型コロナウィルス感染症ワクチンの開発における多国間主義の関連性を強調し、ワクチンの最初の供給を生み出したBiontechPfizerの間の国境を越えた協力を例に挙げました。パンデミックにも多国間主義は効率的であることが証明されましたが、フェルバーマイヤー教授は、回復力と独立性を求めて経済が内向きになる可能性を危惧しています。

エジプトの国際協力大臣であるラニア・アルマシャット(Rania Al-Mashat)氏は、エジプトとMENA(中東・北アフリカ)地域におけるグローバルバリューチェーンの将来について議論しました。 アルマシャット氏は、地域化されたサプライチェーンを話題に取り上げながら、サプライチェーンを新しい地域に移動することは本当に実現可能なのか疑問を投げかけました。彼女はさらに、国際的傾向となっているグリーンリカバリー(持続可能な経済復興)について述べ、政府と企業の両方が環境、社会、ガバナンス(ESG)基準をますます重要視するようになっていると強調し、 また「ESGは誰もが読んだり、話したり、書いたり、遵守しようとしているルールやガイドラインです。そのため、ESGは暗黙のうちに国際的な協議事項となるでしょう。」と説明しました。

McKinsey Global Instituteのスーザン・ルンド(Susan Lund)氏は、「調査対象の管理職の 44%が、短期的な効率よりもリスク対応能力を重視し始めている」と述べています。ルンド氏は、企業がリスク対応能力を高めるための政策について洞察を与え、デュアルソーシング戦略などレジリエンスを高めるための行動が新しい市場開発の見通しを提供できると述べました。 「企業がサプライヤー基盤の多様化を模索しているため、今後35年間で、貿易の流れは過去よりも大きく変化するでしょう。そして、これは過去にグローバルバリューチェーンにそれほど深く参加したことがない国にとっては朗報だと思います。」とルンドは結論付けました。

研究者として長い経験を持つハーバード大学教授 リカルド・ハウスマン(Ricardo Hausmann)氏は、パンデミックの産業政策への影響について議論しました。パンデミックは債務の増加した点GDPが減退した点で高所得国よりも中所得国に大きな打撃を与えており、ワクチンの配布は新興国で遅くなると予想されています。そのため、ハウスマンは中所得国の経済回復に悪影響が出ると予想しています。「私の懸念は、中所得国では財政の余地が少なすぎることです。 [] 全域最適点の観点において、彼らは慎重すぎたのです。雇用と会社は甚大な被害を受けためさらなる国際金融が必要だと思います。」とハウスマン氏は語りました。

最近の経験に基づいて、すべてのパネリストは、パンデミックから学んだ主な教訓の1つとして、バリューチェーンがよりレジリエンスを持たなければならないという点を挙げました。しかし、内向きになることではレジリエンスを達成することはできません。その代わりに、企業は新しいマーケット開拓の可能性を生み出すことができる多様なサプライチェーンの構築に焦点を当てるべきです。重ねて、すべてのパネリストは持続的な回復への道のりには、さまざまなレベルで、複数の利害関係者にわたる国際的なコラボレーションと調整の取り組みを強化する必要があることにも同意しました。

※UNIDOのindustrial Analytics Platformにて主題トピックに関する記事を閲覧できます。
※録画映像はこちらよりご視聴頂けます。