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UNIDO事務局長より加盟国へのメッセージ:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)へのUNIDOの対応について

UNIDO事務局長より加盟国へのメッセージ:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)へのUNIDOの対応について

2020.04.07

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的な流行(パンデミック)は、UNIDOの歴史や国連75年の歴史において、未だかつてない世界的危機を引き起こしています。私たち一人ひとりは、未曾有の課題に直面しています。すべての国が、ヘルスケアシステム、経済、社会全体において、影響を受けています。このウィルスを一緒に克服するための世界的な闘いにおいて、UNIDOは全ての国連機関と協力し、加盟国がこの世界的危機を克服するための支援を行います。深刻な景気後退を視野に入れ、UNIDOはパンデミックの余波における中長期的な支援も準備しています。

何としても人命を守るために必要がある健康緊急事態として始まったものが、経済・社会危機に急速に変わりつつあります。

製造への適応は差し迫った必需品不足への対処に寄与し、突発的な生産活動の停滞はグローバル・バリューチェーンと製品供給に混乱をもたらし、また、産業部門は危機の影響を強く受け深刻な失業レベルと不況を解決するための一助となる必要があるように、包摂的かつ持続可能な産業開発は、この世界的危機のすべてのフェーズで重要な役割を果たします。様々な地域や国の経済に影響が広がった際、女性事業主、起業家、労働者の特定のニーズへの対応が重要になります。

COVID-19が引き起こす危機に対するUNIDOの対応は、3つのフェーズで構成されています。短期的には、加盟国が健康緊急事態に迅速に対応するのを支援します。中期的には、生産活動における混乱の影響を軽減する方法、および生産とサプライチェーンを再び活性化するためのアドバイスを提供します。余波が残るなか長期的には、復興段階にある加盟国に対し、開発支援を行います。

健康緊急事態への即時対応として、UNIDOは途上国と最も脆弱な状況にある国々の危機対応能力を強化するための支援を活性化させるパートナーを求めています。直近の数週間において、緊急に必要な物資と個人用保護具の調達支援を要請するいくつかの加盟国を支援しました。

UNIDOは、アフリカの世界保健機関(WHO)との共同イニシアチブで、手袋、ガウン、マスク、アルコール消毒液のような個人用保護具の製造における技術的な専門知識を提供する準備もしています。また、サプライチェーンの管理、品質保証、トレーニング、環境に配慮した廃棄物処理など、工業生産におけるノウハウを共有し、公衆衛生分野におけるWHOのノウハウを補完します。

企業レベルでは、COVID-19との闘いへの貢献として、工場を改造し従来の生産ラインを改編し、健康危機に対処するために必要不可欠な物資の製造への投資拡大が挙げられます。

UNIDOが3月に実施した初期段階における支援の事例として、アルメニアのエレバンにあるフィールドオフィスは、アルメニアのマスク需要の増加に対応するため、マスク製造に投資を拡大した3つのアパレルメーカーと国の保健当局をつなげました。これは、私たちが、必要とされる速度と効率で製造業界が方向転換できるよう支援する事例の一つです。他国のUNIDOプロジェクトも、危険と不足にさらされている人々の差し迫った要件の緩和に貢献しています。

さらに、現在、世界中の政府が行う予防、緩和、是正措置に対する分析とアドバイスも求められています。UNIDOの政策研究統計局は、経済活動の混乱に対応するだけでなく、中長期的に包摂的かつ持続可能な経済復興を支援するために、COVID-19のパンデミックが製造業へ与える影響に関する分析レポートと政策ブリーフを作成し、最新の見解とベストプラクティスを提供しています。

重要な点として、現在の危機には明白な希望もあります。それは、世界中で新たな連帯と団結をもたらしていることです。気候変動と同様に、COVID-19のパンデミックは地球規模の課題であり、多国間の協力によって適切に対処できます。

国連事務総長によるテレビ会議で、私たちは力を合わせ、協調しながらの加盟国支援に同意しました。事務総長は、ウィルスを打ち負かすためだけでなく、それがもたらす深刻な影響に立ち向かうために、私たちは団結しなければならないと強調しました。そして、危機の最中あるいはその後に私たちが行うすべての取り組みは、より平等で包括的で持続可能な経済と、パンデミック、気候変動、および持続可能な開発のための2030アジェンダの達成に悪影響を与える他の多くのグローバルな課題に直面しても、より強靭性を備える社会の構築に重点を置く必要があります。

私たちが緊急事態に対応し、社会経済への影響に対処するとき、誰一人取り残さないようにし、労働人口における女性や若者の継続的な参加が確実となるよう一緒に取り組む必要があります。COVID-19による危機と製造業・輸出部門への打撃は、危機の最中だけでなく、復興段階においても、これらの部門への男性と女性の参加に異なる影響を与える可能性があります。UNIDOは、包摂的かつ持続可能な経済復興のために、パートナーと緊密に協力し、危機が去った後に、専門知識と統合支援を展開する準備をしています。特に、途上国の中小企業への支援、雇用と所得の創出、輸出と貿易の強化は重要です。

最後に、私は世界中の人々、特に女性や若者、後発開発途上国、開発途上国、そして紛争地域で生活する人々をはじめとした最も脆弱な人々との連帯を表明します。また、母国を離れた場所で活動を行う各国の代表に心より感謝を表します。帰国した家族や友人、あなたの故郷である地域社会や国への影響に対する懸念に共感を抱きます。そして、この困難な時期における連帯感と相互支援の高まりにも共感します。

加えて、私たちが直面する新たな課題に対し、革新的なソリューションを見つけながら、事業の継続に強くコミットしているUNIDOと関連組織のスタッフに心から感謝を表します。

加盟国の皆さん、私は、UNIDOおよび国連システム全体とともに、この危機の時期に、そして復興に向けた険しい道のりに共に取り組んでいくことを期待しています。UNIDOは、今日も明日も、そして今後もあなたと共に歩んでいきます。共に、私たちは、強力なグローバル経済、将来の課題に対抗するために十分な強靭力と柔軟性、誰一人取り残さない力を構築できます。

国連工業開発機関(UNIDO)事務局長 リー・ヨン