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「アフリカ進出の拠点に」モーリシャスEDB部長インタビュー

「アフリカ進出の拠点に」モーリシャスEDB部長インタビュー

2019.07.25

外務省HPより

西インド洋に位置し、アフリカにありながら人口の大半はインド系が占め、アフリカ諸国への投資拠点なるべく金融分野に力を注ぐモーリシャス。伝統的な砂糖や繊維産業からの転換を推し進め、国際金融センターや経済特区を設置するなどして、外国直接投資の呼び込みに尽力しています。アフリカ進出に対する日本企業の熱の高まりを受けて、UNIDO ITPO東京のデレゲートプログラムで6月上旬、モーリシャス経済開発庁(EDB:Economic Development Board of Mauritius)のメンバー2人が来日しました。このうち、海外戦略事業部のアルヴィンド・ラダクリシュナ部長に、同国が取り組む経済戦略や日本企業への期待などを聞きました。

 

 

Q,投資を呼び込むための戦略は。

A,日本を含む多くのアジアの国々は、アフリカとのビジネスを熱望する一方、安全性や教育水準を不安視して進出に抵抗があるようです。その点、モーリシャスは、世界銀行が発表するビジネス環境ランキングで、長らくアフリカで1位をキープし、生活環境、教育の質、安全性に自信を持っています。また、モーリシャスは、東南部アフリカ市場共同体(COMESA)や南部アフリカ開発共同体(SADC)に属すなど、各国・地域と積極的な投資協定を結んでおり、関税なしでアフリカ、ヨーロッパ、アメリカと貿易ができます。それも我々の大きなアドバンテージで、既に欧州からの有力な投資先となっています。アフリカ進出を探る日本企業に正確な情報を発信し、新たな投資先としての選択肢になってもらえるよう、今年の8月にも東京に拠点を設けます。

Q,日本から特に誘致したい産業を3つあげるとしたら?

A,まずは輸出目的の製造業です。次に製薬業の誘致にも力を入れています。もう一つはTech企業です。BiotechFinTechAgriTechなどあらゆるTech企業を呼び込みたいです。モーリシャスは全土が経済特区(スペシャルエコノミックゾーン)になっています。また、関税なしで材料を輸入して、関税なしで製品を輸出する加工貿易が可能な「フリーポート」も備えています。

Q,製造業ということですが、労働力が必要ですね。

A,モーリシャスには高い教育を受けた労働力が豊富です。英語とフランス語も堪能です。しかし、人口が120万人ほどですので、工場を作ってエンジニアを5千人雇いたいといわれれば足りないかもしれません。しかしそういう場合には、インドやバングラデシュ、中国など、海外からいくらでも働きたい人を呼んでくればいいのです。ですから問題にはなりません。

Q,伝統的な砂糖や繊維産業の現状は。

A,繊維産業は非常に重要です。垂直統合された産業形態が発達しています。欧州向けには5500品目で関税も数量制限クオータもありません。これは大きなアドバンテージです。ラム酒やエタノールなど、サトウキビを利用したアグロビジネスの幅も多様化して広がっていて、相対的に砂糖産業の比率は徐々に下がっています。

Q,日本企業の動向はどうでしょうか

A,日本企業の関心の高さは驚きました。すでに我々のことを調査しているのです。「モーリシャスは安全で、教育もいいですね」などと知っている人がいました。しかし、もっと知名度を上げ、日本投資家を呼び込みたいところです。現在のところ、豊田通商、三井物産、三菱商事、損保ジャパンなどが展開しており、進出を計画している企業もあります。全土15ヶ所のスマートシティプロジェクトも進行中で、様々な分野でビジネスチャンスが広がっています。

Q,インドとのDTAAが変更になりましたが、経済に影響はありますか。

A,ありません。数年前から経済を多様化する取り組みを準備してきました。私たちはむしろ良い決断だったと思っています。インドはこれまでも、これからも重要なパートナーです。長年の密接な関係があり、人口の過半数はインド系です。地下鉄の建設はインドの協力で進行中です。同じように良い関係を日本とも結びたいと考えています。

日系企業の担当者らと情報交換するラダクリシュナ部長(左)たち

 

Q,日本での今後の展開を聞かせてください。

A,おそらく中国や韓国などが進出したのを見たからか、今回の訪問で、日本企業の興味関心の高まりを実感しました。我々はこれを機会と捉え、日本に拠点をつくり、日本企業の進出を促進していきます。東京だけでなく、大阪など他の都市での活動も増やしていきます。観光客の往来もまだそれほど多くはないので、ビーチやゴルフ、フィッシングなど豊富な観光資源をアピールしていきたいとも思っています。

 

Q,初来日の日本の印象は。

セミナーで投資を呼びかけるラダクリシュナ部長

A,東京しか見ることができませんでしたが、街や企業の発展ぶりに驚きました。「Love in Japan」というインド映画が流行ったこともあり、その時期は誰もが日本を良く知っていました。その後は、ソニーやトヨタ、パナソニックといった日本製の家電や自動車などを通じて、皆日本のことはよく知っています。いまやワールドクラスの製品を作る日本が、世界大戦からどのようにしてここまで発展したのかと本当に驚かされます。製造業や製薬業、Tech企業など、いずれも日本企業の技術は非常に優れていますので、是非モーリシャスに来てもらいたいと思います。